入試問題を解くうえで,符号のミスというのは結構あります.
今回は,符号ミスに注意しながら解く練習として仕事の計算問題を解説していきます.
<解答>
仕事は,力と変位の内積です.そのことを知っていれば下に書かれているような場合分けはせずとも計算はできます.
途中,場合分けをしているものもありますが,最終的にはそのようなことはせずに解けるようにしましょう.
(1) 力の方向と移動した方向が同じなので,正の仕事.$W_{1}=fl$(答)
(2) 力の方向と移動した方向が逆向きなので,負の仕事.$W_{2}=-fl$(答)
(3)
(i) $F>0$,つまり右方向に力がはたらいているとき.
移動する方向と力の方向が同じなので,正の仕事.$F>0$だから,力の大きさは$|F|=F$.よって,
$W_{3}=Fl$
(ii) $F<0$,つまり,左方向に力がはたらいているとき
移動している方向と逆向きに力がはたらいているので負の仕事.$F<0$より,力の大きさは$|F|=\textcolor{green}{\bf{-}}F$.よって,
$W_{3}=\textcolor{blue}{\bf -}(\textcolor{green}{\bf -}F)\times l=Fl$
(iii) $F=0$のとき,$W_{3}=0$.
(i)~(iii)より,$W_{3}=Fl$(答)
※ 青のマイナス「$-$」は負の仕事のマイナスで,緑のマイナス「$-$」は絶対値をはずしたときのマイナスを表しています.
(4)
(i) $F>0$,つまり右方向に力がはたらいているとき,
移動する方向と力の方向が逆向きなので,負の仕事.$F>0$だから,力の大きさは$|F|=F$.よって,
$W_{4}=\textcolor{blue}{\bf -}Fl$
(ii) $F<0$,つまり,左方向に力がはたらいているとき
移動している方向と同じ向きに力がはたらいているので正の仕事.$F<0$より,力の大きさは$|F|=\textcolor{green}{\bf -}F$.よって,
$W_{4}=\textcolor{green}{\bf -}Fl$
(iii) $F=0$のとき,$W_{4}=0$.
(i)~(iii)より,$W_{4}=-Fl$(答)
※ 青のマイナス「$-$」は負の仕事のマイナスで,緑のマイナス「$-$」は絶対値をはずしたときのマイナスを表しています.
(5)
(i) $x>0$のとき
移動している方向と同じ方向に力がはたらいているので正の仕事.$x>0$より,移動距離は$|x|=x$だから,
$W_{5}=fx$
(ii) $x<0$のとき
移動している方向と反対方向に力がはたらいているので負の仕事.$x<0$より,移動距離は$|x|=\textcolor{green}{\bf -}x$だから,
$W_{5}=\textcolor{blue}{\bf -}f\times (\textcolor{green}{\bf -}x)=fx$
(iii) $x=0$のとき,$W_{5}=0$.
(i)~(iii)より,$W_{5}=fx$(答)
※ 青のマイナス「$-$」は負の仕事のマイナスで,緑のマイナス「$-$」は絶対値をはずしたときのマイナスを表しています.
(6)
(i) $x>0$のとき
移動している方向と反対方向に力がはたらいているので負の仕事.$x>0$より,移動距離は$|x|=x$だから,
$W_{6}=\textcolor{blue}{\bf -}fx$
(ii) $x<0$のとき
移動している方向と同じ方向に力がはたらいているので正の仕事.$x<0$より,移動距離は$|x|=\textcolor{green}{\bf -}x$だから,
$W_{6}=f\times (\textcolor{green}{\bf -}x)=-fx$
(iii) $x=0$のとき,$W_{6}=0$.
(i)~(iii)より,$W_{6}=-fx$(答)
※ 青のマイナス「$-$」は負の仕事のマイナスで,緑のマイナス「$-$」は絶対値をはずしたときのマイナスを表しています.
(7) 今回は$F=0$や$x=0$は場合分けが多くなりすぎるので省略します.
(i) $F>0$,$x>0$のとき,
移動する方向と同じ方向に力がはたらいているので正の仕事.$F>0,x>0$より,$|F|=F,|x|=x$.よって,
$W_{7}=Fx$
(ii) $F>0,x<0$のとき,
移動する方向と逆向きに力がはたらいているので負の仕事.$F>0,x<0$より,$|F|=F,|x|=\textcolor{green}{\bf -}x$.よって,
$W_{7}=\textcolor{blue}{\bf -}F\times (\textcolor{green}{\bf -}x)=Fx$
(iii) $F<0,x>0$のとき,
移動する方向と逆向きに力がはたらいているので負の仕事.$F<0,x>0$より,$|F|=\textcolor{green}{\bf -}F,|x|=x$.よって,
$W_{7}=\textcolor{blue}{\bf -}(\textcolor{green}{\bf -}F)\times x=Fx$
(iv) $F<0,x<0$のとき,
移動する方向と逆向きに力がはたらいているので正の仕事.$F<0,x<0$より,$|F|=\textcolor{green}{\bf -}F,|x|=\textcolor{green}{\bf -}x$.よって,
$W_{7}=(\textcolor{green}{\bf -}F)\times (\textcolor{green}{\bf -}x)=Fx$
(i)~(iv)より,$W_{7}=Fx$(答)
※ 青のマイナス「$-$」は負の仕事のマイナスで,緑のマイナス「$-$」は絶対値をはずしたときのマイナスを表しています.
$F$や$x$は正負がわからないから,いちいち場合分けをしなくちゃいけないのが面倒だね.
実際の問題では,$F$や$x$は「正の値」だと思って計算した結果と一致します.
(3)~(7)は次のようにシンプルに計算ができてしまいます.
(3) ($F>0$だと思って)右に$F$の力がはたらき,$l$だけ右に移動しているから正の仕事.よって,$W_{3}=Fl$(答)
(4) ($F>0$だと思って)右に$F$の力がはたらき,$l$だけ左に移動しているから負の仕事.よって,$W_{4}=-Fl$(答)
(5) ($x>0$だと思って)大きさ$f$の力が右にはたらき,右に$x$だけ移動しているので正の仕事.よって,$W_{5}=fx$(答)
(6) ($x>0$だと思って)大きさ$f$の力が左にはたらき,右に$x$だけ移動しているので負の仕事.よって,$W_{6}=-fx$(答)
(7) ($F,x>0$だと思って)右に$F$の力がはたらき,$x$だけ右に移動しているので正の仕事.よって,$W_{7}=Fx$(答)
さらに,仕事が力と変位の内積であることを用いれば,「正の仕事」や「負の仕事」をわざわざ判別せずにさらにシンプルに計算できます.
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