重心の運動エネルギーと相対運動の運動エネルギーの利用3

NEKO
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重心の運動エネルギーと相対運動の運動エネルギーの利用の練習問題です.

説明は次の記事を見てください.

問題

 

 水平でなめらかな床の上に質量$M$の台が置かれている.台は左右対称で,中心がOの,半径$R$の半円形状のなめらかなすべり面でできている.曲面の最下点Aに質量$m$の物体を置き,物体と台が静止した状態から物体のみに大きさ$v_{0}$の初速度を水平右向きに与えた.その後,物体は曲面をのぼり,それとともに台は右方向へ運動した.物体がOと同じ高さのBに達したときの物体の鉛直速度の大きさを$M,m,v_{0},g,R$を用いて表せ.ただし,$g$は重力加速度の大きさである.

<解答>

運動エネルギーの変形

質量$m_{1}$,速度$v_{1}$の物体1と質量$m_{2}$,速度$v_{2}$の物体2の運動エネルギーの和$K$は

$K=\dfrac{1}{2}m_{1}v_{1}^{2}+\dfrac{1}{2}m_{2}v_{2}^{2}$

であり,重心速度$v_{\rm G}=\dfrac{m_{1}v_{1}+m_{2}v_{2}}{m_{1}+m_{2}}$,物体1に対する物体2の相対速度$v_{\rm r}=v_{2}-v_{1}$を用いると,運動エネルギー$K$は次のように変形できる.

$K=\dfrac{1}{2}(m_{1}+m_{2})v_{\rm G}^{2}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{m_{1}m_{2}}{m_{1}+m_{2}}v_{\rm r}^{2}$

速度を$(水平右向き速度,鉛直上向きの速度)$でかく.すると,床で静止した観測者からみた物体の速度は$(v_{0},0)$,台の速度は$(0,0)$なので,台からみた物体の速度は$(v_{0},0)$となる.すると,物体と台の重心速度は

$\left(\dfrac{M\times 0+m\times v_{0}}{M+m},\dfrac{M\times 0+m\times 0}{M+m} \right)=\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0},0 \right)$

よって,重心の運動エネルギーは

$\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0} \right)^{2}$

で相対運動の運動エネルギーは

$\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{0}^{2}$

よって,物体がAにあるときの物体と台の運動エネルギーの和は

$\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0} \right)^{2}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{0}^{2}$ $\cdots (\ast)$

また,物体がBにきたとき,台からみると,物体の水平速度は$0$である.鉛直速度を$v_{y}$とする.すると,台からみた物体の速度は$(0,v_{y})$となる.このときの台の速度を$(V,0)$とすると,床で静止した観測者からみた物体の速度は$(V,v_{y})$となる.このとき,物体と台の重心速度は

$\left(\dfrac{MV+mv}{M+m},\dfrac{M\times 0+m\times v_{y}}{M+m} \right)=\left(V,\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)$

となる.重心の運動エネルギーは

$\dfrac{1}{2}(M+m)\left\{ V^{2}+\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2}\right\}$

水平方向の運動量保存則より,$mv_{0}=(M+m)V$だから,$V=\dfrac{m}{M+m}v_{0}$を代入して

\begin{align*} &\dfrac{1}{2}(M+m)\left\{ V^{2}+\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2}\right\}\\ &=\dfrac{1}{2}(M+m)V^{2}+\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2}\\ &=\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0} \right)^{2}+\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2} \end{align*}

相対運動の運動エネルギーは

$\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{y}^{2}$

よって,物体がBにきたときの物体と台の運動エネルギーの和は

$\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0} \right)^{2}+\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{y}^{2}$ $\cdots (2\ast)$

$(\ast),(2\ast)$を用いて,台と物体の力学的エネルギー保存則を立てる.物体がAにあるところを重力による位置エネルギーの基準点とすると,Bでの位置エネルギーは$mgR$より

\begin{align*} &\cancel{\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0} \right)^{2}}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{0}^{2}\\ &=\cancel{\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{0} \right)^{2}}+\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{y}^{2}+mgR \end{align*}

このとき,右辺は

\begin{align*} &\dfrac{1}{2}(M+m)\left(\dfrac{m}{M+m}v_{y}\right)^{2}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{y}^{2}+mgR=\dfrac{1}{2}mv_{y}^{2}+mgR \end{align*}

より

$\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}v_{0}^{2}=\dfrac{1}{2}mv_{y}^{2}+mgR$ $\therefore v_{y}=\textcolor{red}{\sqrt{\dfrac{M}{M+m}v_{0}^{2}-2gR }}$

<別解>

力学的エネルギー保存則より

$\dfrac{1}{2}mv_{0}^{2}=\dfrac{1}{2}m(V^{2}+v_{y}^{2})+\dfrac{1}{2}MV^{2}+mgR \cdots (3\ast)$

また,水平方向の運動量保存則より

$mv_{0}=(M+m)V$ $\therefore V=\dfrac{m}{M+m}v_{0} \cdots (4\ast)$

$(4\ast)$を$(3\ast)$に代入して$v_{y}$を求めると

\begin{align*} v_{y}=\textcolor{red}{\sqrt{\dfrac{M}{M+m}v_{0}^{2}-2gR }} \end{align*}

NEKO
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今回は<解答>でも<別解>でも同じくらいの計算量だったね.

鉛直速度がある場合,重心の速度が変化することが多いので,注意して計算しましょう.

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