交流の発生と直流発電機

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PHYさん
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磁場がある中でコイルを回転させると交流が発生します.

交流は電位がプラスになったり,マイナスになったりすることで回路をつなげると電流の向きが時間とともに変化してしまいます.

そこで,整流子ブラシをつけることによって,交流の電位がマイナスにならないように工夫をしていきます.

このような発電機を直流発電機といいます.

まずは,交流の発生について確認しましょう.

交流の発生

PHYさん
PHYさん

上のようなNS磁石内にコイルABCDを用意し,軸の周りに角速度$\omega$でコイルを回転させます.

PHYさん
PHYさん

このコイルはABとCDの長さが$a$で,BCとDAの長さが$b$としましょう.

すると,軸とABおよびCDとの距離は$\dfrac{b}{2}$となります.

PHYさん
PHYさん

上図はP,Q側からコイルを見た図です.

軸をOとしています.

NからSの方向に一様な磁場があり,磁束密度の大きさを$B$としましょう.

上が時刻$0$として,角速度$\omega$で反時計回りにコイルを回転させます.

PHYさん
PHYさん

上図は時刻$t$のときの図です.

時刻$t$では$\omega t$(角度=角速度×時間)だけ回転しています.

このとき,AB,CD部分は導体棒と考えることができ,ABやBCは速さ$\dfrac{b}{2}\omega $で円運動をしています.

NEKO
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等速円運動の速さ$v$は角速度$\omega$と半径$r$を使って

$v=r\omega$

と表すことができたね.今回Oと導体棒ABの距離が$\dfrac{b}{2}$だから,$r=\dfrac{b}{2}$なんだね.

PHYさん
PHYさん

導体棒ABが磁場中を運動しているので,誘導起電力が生じます.

導体棒に生じる誘導起電力の公式(直線運動)

PQ間に生じる誘導起電力の大きさ$V_{\rm{PQ}}$は,PQの長さを$l$,PQ方向に垂直な速さを$v_{\perp}$,導体棒が動く方向と垂直な磁束密度の大きさを$B$とすれば,

$V=v_{\perp}Bl$

NEKO
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誘導起電力は磁場に垂直な速度成分を使うんだったね.

上図のように,速度を分解すれば,$B$に垂直な速度成分は$\dfrac{b}{2}\omega \cos \omega t$だね.

PHYさん
PHYさん

さきほどの図では,上方向に速度$\dfrac{b}{2}\omega \cos\omega t$をもち,右方向に磁束密度$B$がかかっているのですが(上図左),わかりにくい場合は上図右のように,左図を反時計回りに$90^{\circ}$回転させると,よくある導体棒に問題に見えてきます.

導体棒に生じる誘導起電力の公式(直線運動)

PQ間に生じる誘導起電力の大きさ$V_{\rm{PQ}}$は,PQの長さを$l$,PQ方向に垂直な速さを$v_{\perp}$,導体棒が動く方向と垂直な磁束密度の大きさを$B$とすれば,

$V=v_{\perp}Bl$

PHYさん
PHYさん

導体棒CDについても同様に考えていきます.

導体棒CDは下向きの速度をもっています.

NEKO
NEKO

CD部分は導体棒の磁場垂直な速度成分が下向きだから,ABとは反対方向に誘導起電力が生じるんだね.

PHYさん
PHYさん

AB部分とCD部分をどちらも書いたものが上図です.

こうすると,Pに対するQの電位は(Pを$0$VとしたときのQの電位)

$\dfrac{Bab\omega }{2}\cos \omega t+\dfrac{Bab\omega }{2}\cos \omega t=Bab\omega \cos \omega t$

となります.

NEKO
NEKO

Pに対するQの電位の時間変化$Bab\omega \cos\omega t$を書くと上図のようになるんだね.

この電位$V$はP(A,B側,$\textcolor{green}{緑}$点側)に対するQ(C,D側$\textcolor{yellow}{黄色}$点側)の電位でプラスになったりマイナスする交流電圧になっているね.

ここからどうやって直流にするんだろう?

PHYさん
PHYさん

直流にするために,P,Q部分に整流子をとりつけます.

直流発電機

NEKO
NEKO

これが整流子だね.円柱型のものに切れ目がついているだけだけど,これで何か変わるの??

PHYさん
PHYさん

整流子をとりつけただけでは変わらないのですが,とりあえず,$\rm C_{1}$の方をP側に,$\rm C_{2}$の方をQ側にとりつけましょう.コイルが回転すると整流子$\rm C_{1},C_{2}$も一緒に回転します.

PHYさん
PHYさん

さらにブラシ$\rm B_{1},B_{2}$を用意します.このブラシ$\rm B_{1},B_{2}$は回転しません.ブラシは固定したままで整流子とコイルが回転します.

PHYさん
PHYさん

再びコイルと整流子の回転について考えます.この整流子の隙間部分を通る直線(青線)とコイルの面ABCDに垂直な直線(濃い緑線)と平行になるように取り付けられています.

PHYさん
PHYさん

さきほど計算したP(A,B側で上図の緑点)に対するQ(CD側で上図の黄色点)の電位$V$は$V=Bab\omega \cos\omega t$でしたが,$Bab\omega =V_{0}$とおいて,

$V=V_{0}\cos\omega t$

と表します.

すると,コイルの回転とPに対するQの関係は上図のようになります.コイルの回転とともにPに対するQの電位$V$が時間変化していることを確認してください.

①,②,③・・・⑨でちょうどコイルが一回転しています.

これを整流子とブラシに着目して書いたものが下図です.

見分けがつきやすいよに$\rm C_{1}$(P側で,AB側)を緑色,$\rm C_{2}$(Q側で,CD側)を黄色に塗っています.

$\rm C_{1}$側(P側,AB側)を電位の基準としているので,下図の緑が毎回電位$0$になっています.

そして,$\rm C_{2}$側(Q側,CD側)の電位が時間とともに変化します.

以下,$\rm B_{1}$(右側のブラシ,黒い点側)に対する$\rm B_{2}$(左側のブラシ,赤い点側)の電位を考えます.

NEKO
NEKO

①,②では赤い点側が正の電位になっているね.

③では,電位が$0$

ただ,④では,赤い点側の電位が$0$で黒い点側の電位が$-\dfrac{V_{0}}{\sqrt{2}}$になっているね.

PHYさん
PHYさん

あくまで$\rm B_{1}$(右側のブラシ,黒い点側)に対する$\rm B_{2}$(左側のブラシ,赤い点側)の電位を考えているので,この場合は黒い点に対する赤い点の電位は$\dfrac{V_{0}}{\sqrt{2}}$になります.

NEKO
NEKO

そうか!④では黒い点より赤い点側の電位が$\dfrac{V_{0}}{\sqrt{2}}$高くなっているんだね.

PHYさん
PHYさん

はい.⑤以降も整流子とブラシによって,結局黒い点を基準にした赤い点の電位はかならず$0$以上になります.

黒い点に対する赤い点の電位をグラフにすると次のようになります.

下図の赤い太曲線が黒い点側に対する赤い点の電位の時間変化を表しています.

NEKO
NEKO

これで,電位が必ず正になる直流電源ができたね.

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