重心の運動エネルギーと相対運動の運動エネルギーの利用6

NEKO
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重心の運動エネルギーと相対運動の運動エネルギーの利用の練習問題です.

説明は次の記事を見てください.

問題

 

上図(a)のように,水平で滑らかな床の上に質量$M$半球がおかれている.半球の中心はOで,半径は$R$である.半球上の最高点Aに質量$m$の物体をおくと,初速度0で物体が動き始めて,それとともに半球も運動を開始した.物体が図(b)のように半球上のBにあるときの半球からみた物体の速さ$u$を$M,m,\theta,g,R$を用いて表せ.ただし,$\angle{\rm AOB}=\theta$である.また,重力加速度の大きさを$g$とする.

<解答>

運動エネルギーの変形

質量$m_{1}$,速度$v_{1}$の物体1と質量$m_{2}$,速度$v_{2}$の物体2の運動エネルギーの和$K$は

$K=\dfrac{1}{2}m_{1}v_{1}^{2}+\dfrac{1}{2}m_{2}v_{2}^{2}$

であり,重心速度$v_{\rm G}=\dfrac{m_{1}v_{1}+m_{2}v_{2}}{m_{1}+m_{2}}$,物体1に対する物体2の相対速度$v_{\rm r}=v_{2}-v_{1}$を用いると,運動エネルギー$K$は次のように変形できる.

$K=\dfrac{1}{2}(m_{1}+m_{2})v_{\rm G}^{2}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{m_{1}m_{2}}{m_{1}+m_{2}}v_{\rm r}^{2}$

速度成分を$(水平右方向成分,鉛直下向き成分)$で表す.

床からみた半球の速度を$(V,0)$とする.

半球からみた物体の速さ$u$を用いると,半球からみた物体の速度は$(u\cos\theta,u\sin\theta)$.

すると床からみた物体の速度$(v_{x},v_{y})$は

$(v_{x},v_{y})=(V,0)+(u\cos\theta,u\sin\theta)=(V+u\cos\theta,u\sin\theta)$

となる.まず,図(a)において,半球と物体の水平方向の重心速度は$0$であり,半球と物体にはたらく水平方向の力の和は$0$なので,(b)における半球と物体の水平方向の重心速度も$0$.

さらに,(b)における鉛直方向の重心速度は

$\dfrac{M\times 0+mv_{y}}{M+m}=\dfrac{mu\sin\theta}{M+m}$

よって,(b)での重心の運動エネルギー$K_{\rm bg}$は

$K_{\rm bg}=\dfrac{1}{2}(M+m)\left\{0^{2}+\left( \dfrac{mu\sin\theta}{M+m}\right)^{2} \right\}=\dfrac{m^{2}u^{2}\sin^{2}\theta}{2(M+m)}$

また,(b)での相対運動の運動エネルギー$K_{\rm br}$は

$K_{\rm br}=\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}u^{2}$

球と物体の運動エネルギー$K_{\rm b}$は重心の運動エネルギー$K_{\rm bg}$と相対運動の運動エネルギー$K_{\rm br}$に分けることができるので,

\begin{align*} K_{\rm b}&=K_{\rm bg}+K_{\rm br}\\ &=\dfrac{m^{2}u^{2}\sin^{2}\theta}{2(M+m)}+\dfrac{1}{2}\cdot \dfrac{Mm}{M+m}u^{2}=\dfrac{(M+m\sin^{2}\theta)mu^{2}}{2(M+m)} \end{align*} また,(b)での物体の位置を重力による位置エネルギーの基準点とすると,(a)での物体の重力による位置エネルギー$U_{\rm a}$は

$U_{\rm a}=mgR(1-\cos\theta)$

(a)の球と物体の運動エネルギーの和は$K_{\rm a}=0$,(b)での重力による位置エネルギーは$U_{\rm b}=0$なので力学的エネルギー保存則より

$U_{\rm a}+K_{\rm a}=U_{\rm b} +K_{\rm b}$

\begin{align*} &mgR(1-\cos\theta)+0=0+\dfrac{(M+m\sin^{2}\theta)mu^{2}}{2(M+m)}\\ &\therefore u=\textcolor{red}{\sqrt{\dfrac{2(M+m)gR(1-\cos\theta) }{M+m\sin^{2}\theta} } } \end{align*}

<別解>

水平方向の運動量保存則

$0=mv_{x}+MV$

に$v_{x}=V+u\cos\theta$を代入して

$0=m(V+u\cos\theta)+MV$ $\therefore\,\,V=-\dfrac{mu\cos\theta}{M+m}$ $\cdots (\ast)$

力学的エネルギー保存則より

$mgR(1-\cos\theta)=\dfrac{1}{2}m(v_{x}^{2}+v_{y}^{2})+\dfrac{1}{2}MV^{2}$

$v_{x}=V+u\cos\theta,v_{y}=u\sin\theta$を代入して

$mgR(1-\cos\theta)=\dfrac{1}{2}m\left\{(V+u\cos\theta)^{2}+(u\sin\theta)^{2} \right\}+\dfrac{1}{2}MV^{2}$

$\dfrac{1}{2}mu^{2}+mVu\cos\theta+\dfrac{1}{2}MV^{2}=mgR(1-\cos\theta)$ $\cdots (2\ast)$

$(2\ast)$を$(\ast)$に代入して$u$を求めると,

$u=\textcolor{red}{\sqrt{\dfrac{2(M+m)gR(1-\cos\theta) }{M+m\sin^{2}\theta} } }$

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