[標準]単振動演習⑭ 回転する円板中の単振動

力学
問題

図1および図2のように,円板Dの溝に質量$m[\rm kg]$の小物体Aと自然長が$l_{0}[\rm m]$でばね定数$k[\rm N/m]$のばねを取り付けた.さらに,長さ$\dfrac{l_{0}}{2}[\rm m]$の細い糸の一方の端を小物体Aに,他方の端を質量$\dfrac{m}{2}[\rm kg]$の小物体Bにつないだ.

糸はある大きさ以上の力がかかると切れるが,切れた後でも小物体Aの運動を邪魔することはないものとする.溝と小物体A,Bの幅は等しく,円板Dの溝の側壁および底面はなめらかである.

ばねが自然長に状態の状態にあるときの小物体Aの位置を原点として,ばねが伸びる方向を$x$軸の正の向きにとる.小物体Aの位置を座標$x[\rm m]$で表すとき,以下の[実験]とその(結果)を読み次の問いに答えよ.

ただし,円板の質量は小物体の質量と比べて十分大きい.また,小物体の1辺の長さはばねの自然長に比べてじゅうぶんに小さく無視できるものとする.ばねおよび糸の質量は無視でき,空気抵抗も無視できる.さらに,$k>m\omega_{0}^{2}$を満たしているとする.

[実験]

円板Dを静かに回転させ,糸が切れるまでその角速度の大きさをゆっくりと増した.

(結果)

円板Dの角速度の大きさがが$\omega_{0}[\rm rad/s]$に達したときに糸が切れ,小物体Bは円板Dの外に飛び出した.糸が切れた瞬間に角速度の大きさが一定値$\omega_{0}$に保った.その結果,円板Dとともに回転している観測者から見ると,小物体Aは円板の回転軸に向かって動き出し,その後,単振動をした.以下,$m$,$l_{0}$,$\omega_{0}$,$k$の文字から必要なものを用いて答えよ.

(1) 糸が切れる直前のばねの伸びを求めよ.

(2) 単振動の中心座標$x_{0}$を求めよ.

(3) 単振動の角振動数$\Omega$を求めよ.

<解答>

(1)

NEKO
NEKO

糸が切れる直前は円板Dとともに回転している観測者からみると,まだつりあっているので,つり合いの式を立てましょう.

張力の大きさを$T$とします.

また,ばねの伸びを$x$とすると,弾性力の大きさは$kx$で原点の方向にはたらきます.

さらに,観測者が物体とともに回転しているので,遠心力を考えましょう.

遠心力

物体の質量が$m$,物体が軸のまわりに半径$r$,速さ$v$,角速度$\omega$で回転しているとき,物体とともに回転した観測者からみたときに,遠心力がはたらく.

遠心力の大きさを$f$とすると

$f=mr\omega^{2}=m\dfrac{v^{2}}{r}$

向きは回転軸に向かう方向と逆向き

NEKO
NEKO

遠心力$f=mr\omega^{2}$の$r$は回転半径であることに注意です.

Aの物体は回転半径$l_{0}+x$なので,遠心力の大きさ$f_{\rm A}$は

$f_{\rm A}=m(l_{0}+x)\omega_{0}^{2}$

です.

また,Bの物体は回転半径が$l_{0}+x+\dfrac{l_{0}}{2}$なので,遠心力の大きさ$f_{\rm B}$は

$\eqalign{f_{\rm B}&=\dfrac{m}{2}(l_{0}+x+\dfrac{l_{0}}{2})\omega_{0}^{2}\\&=\dfrac{m}{2}(x+\dfrac{3}{2}l_{0})\omega_{0}^{2}}$

水平方向の力を作図すると,下図のようになります.

AとBのつり合いの式を立てましょう.

★ 円板とともに回転した観測者からみたAの水平方向のつり合いの式

$kx=m(l_{0}+x)\omega_{0}^{2}+T$ $\dots (\ast)$

★ 円板とともに回転した観測者からみたBの水平方向のつり合いの式

$T=\dfrac{m}{2}(x+\dfrac{3}{2}l_{0})\omega_{0}^{2}$ $\dots (2\ast)$

$(\ast)$,$(2\ast)$より,張力$T$を消去して

$\eqalign{kx&=m(l_{0}+x)\omega_{0}^{2}+\dfrac{m}{2}(x+\dfrac{3}{2}l_{0})\omega_{0}^{2}\\&=\dfrac{1}{2}m\omega_{0}^{2}(2l_{0}+2x+x+\dfrac{3}{2}l_{0})\\&=\dfrac{1}{2}m\omega_{0}^{2}(3x+\dfrac{7}{2}l_{0})\\&=\dfrac{1}{4}m\omega_{0}^{2}(6x+7l_{0})}$

両辺$4$をかけて,$x$について整理する.

$\eqalign{4kx&=6m\omega_{0}^{2}x+7ml_{0}\omega_{0}^{2}\cr (4k-6m\omega_{0}^{2})x&=7ml_{0}\omega_{0}^{2}\cr x&=\dfrac{7ml_{0}\omega_{0}^{2}}{4k-6m\omega_{0}^{2}}}$ (答)

(2) 

NEKO
NEKO

単振動の情報を読み取るために,運動方程式を立てましょう.

座標$x$における,加速度を$\alpha$とします.

このとき,はたらく力は弾性力と遠心力のみです.

★ 円板とともに回転する観測者からみたAの運動方程式

$\eqalign{m\alpha &=-kx+m(l_{0}+x)\omega_{0}^{2}\\&=-kx+ml_{0}\omega_{0}^{2}+m\omega_{0}^{2}x\\&=-(k-m\omega_{0}^{2})x+ml_{0}\omega_{0}^{2}\\&=-(k-m\omega_{0}^{2})(x-\dfrac{ml_{0}\omega_{0}^{2}}{k-m\omega_{0}^{2}})}$

NEKO
NEKO

単振動の運動方程式から次のことが読み取れます.

単振動の運動方程式の読み取り

質量を$m$,加速度を$a$,物体の座標を$x$,$x_{0}$を定数,$k$を正の定数とする.

運動方程式が以下で表されている.

$ma=-k(x-x_{0})$

このとき,振動の中心は$x_{0}$,角振動数$\omega$と周期$T$は次のようになる.

$\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$

$T=\dfrac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$

したがって,振動の中心$x_{0}$は

$x_{0}=\dfrac{ml_{0}\omega_{0}^{2}}{k-m\omega_{0}^{2}}$(答)

(3) 

NEKO
NEKO

さらに,運動方程式から角振動数$\Omega$も読み取ることができます.

$\omega_{0}$は円板の角速度であって,円板からみたAの単振動の角振動数ではないですからね.

$\Omega=\sqrt{\dfrac{k-m\omega_{0}^{2}}{m}}$ (答)

NEKO
NEKO

以上,2021年東京理科大の問題の類題でした.

コメント

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