<解答>
(1)
$\rm ae$部分が磁場中を運動しているので,誘導起電力が生じます.
速さが$\dfrac{L}{2T}$で,磁束密度の大きさ$B$,長さが$L$なので,誘導起電力の大きさは,
$\dfrac{L}{2T}\cdot B\cdot L=\dfrac{BL^{2}}{2T}$
今回の問題では,ダイオードがあるので,ダイオードに電流が流れるのか流れないのかを調べる必要があります.
$\rm ae$部分の導線には,順方向$(\rm a\rightarrow e)$に起電力が生じているので,ダイオード$\rm D_{1}$には電流が流れます.(他には電池がないので,明らかでしょう.)
そして,ダイオード$\rm D_{2}$には,とりあえず電流が流れないものとして考えてみましょう.
ダイオード$\rm D_{2}$に電流が流れないものとすると,上図のような向きに電流が流れます.すると,抵抗に電流が流れる方向に電位が下がるので,結果,$\rm d$よりも$\rm b$の方が電位が低くなるため,ダイオード$\rm D_{2}$には電流が流れません.
回路の流れる電流を$i_{1}$として,キルヒホッフ則を立てましょう.
★ キルヒホッフ則
$\dfrac{BL^{2}}{2T}-Ri_{1}-Ri_{1}-Ri_{1}=0$
$\therefore i_{1}=\dfrac{BL^{2}}{6RT}[\rm A]$ (答)
回路に加える力は,電磁力のはたらく向きと逆方向で大きさは同じです.
なので,電磁力の大きさを求めればよいことがわかります.
★ $\rm ae$にはたらく電磁力$F_{1}$
$\eqalign{F_{1}&=i_{1}BL\\&=\dfrac{BL^{2}}{6RT}\cdot BL\\&=\dfrac{B^{2}L^{3}}{6RT}}$
したがって,回路に加える外力の大きさは,$\dfrac{B^{2}L^{3}}{6RT}[\rm N]$(答)
別解として,
外力の仕事率=回路の消費電力
の式を立てて求めることもできます.
★ 外力の仕事率=抵抗で消費する電力の和
$\eqalign{F_{1}\cdot \dfrac{L}{2T}&=i_{1}^{2}R\times 3\cr F_{1}\cdot \dfrac{L}{2T}&=\left(\dfrac{BL^{2}}{6RT}\right)^{2}\times 3R\cr F_{1}&=\dfrac{B^{2}L^{3}}{6RT}}$ (別解答)
(2)
$T<t<2T$のとき,$\rm bd$部分と$\rm bc$部分と$\rm cd$部分に誘導起電力が生じます.
$\rm bd$部分に生じる起電力$V_{\rm bd}$は(1)と同様に
$V_{\rm bd}=\dfrac{BL^{2}}{2T}$
です.
$\rm bc$部分と$\rm cd$部分については丁寧に考えていきましょう.
時刻$t$において,$\rm ae$部分は$\dfrac{L}{2T}t$だけ移動しています.$\rm ed$間の距離が$\dfrac{L}{2}$なので,$\rm bd$部分は$\dfrac{L}{2T}t-\dfrac{L}{2}$だけ磁場がかかっている領域に進入しています.
$\rm cd$部分の磁場に進入している部分$\rm fd$は,
$\left(\dfrac{L}{2T}t-\dfrac{L}{2}\right)\cdot \sqrt{2}$ $\dots (\ast)$
となります.
また,導体棒$\rm fd$の長さ方向に垂直な速度成分は
$\eqalign{\dfrac{L}{2T}\cos\dfrac{\pi}{4}&=\dfrac{L}{2\sqrt{2}T}}$ $\dots (2\ast)$
$(\ast)$,$(2\ast)$より,$\rm fd$部分に生じる起電力$V_{\rm fd}$は
$\eqalign{V_{\rm fd}&=\dfrac{L}{2\sqrt{2}T}\cdot B\cdot \left(\dfrac{L}{2T}t-\dfrac{L}{2}\right)\cdot \sqrt{2}\\&=\dfrac{BL^{2}}{4T}\left(\dfrac{t}{T}-1\right)}$
$\rm bc$部分も同様に考えると,$\dfrac{BL^{2}}{4T}\left(\dfrac{t}{T}-1\right)$の起電力が生じ,$\rm bcd$部分は合わせて
$\eqalign{\dfrac{BL^{2}}{4T}\left(\dfrac{t}{T}-1\right)\cdot 2\\=\dfrac{BL^{2}}{2T}\left(\dfrac{t}{T}-1\right)}$
ここで,$T<t<2T$のとき,
$0<\dfrac{t}{T}-1<1$
なので,$\rm bd$部分の起電力と$\rm bcd$部分の起電力では$\rm bd$部分の起電力の方が常に大きいことが確認できます.
じゃあ,上図の矢印の向きに電流が流れるんだね.
流れる電流を$i_{2}$として,キルヒホッフ則を立てましょう.
★ キルヒホッフ則
$\eqalign{\dfrac{BL^{2}}{2T}-\dfrac{BL^{2}}{4T}\left(\dfrac{t}{T}-1\right)\cdot 2-Ri_{2}\cdot 3&=0\cr 3Ri_{2}&=\dfrac{BL^{2}}{2T}\left(2-\dfrac{t}{T}\right)\cr i_{2}&=\dfrac{BL^{2}}{6RT}\left(2-\dfrac{t}{T}\right)}$
外力は,(1)の別解で紹介した
外力の仕事率=抵抗で消費する電力の和
で計算してみましょう.
外力を$F_{2}$とします.
★ 外力の仕事率=抵抗で消費する電力の和
$\eqalign{F_{2}\cdot \dfrac{L}{2T}&=i_{2}^{2}R\times 3\cr F_{2}\cdot \dfrac{L}{2T}&=\left\{\dfrac{BL^{2}}{6RT}\left(2-\dfrac{t}{T}\right)\right\}^{2}\cdot R\times 3\cr F_{2}&=\dfrac{B^{2}L^{3}}{6RT}\left(2-\dfrac{t}{T}\right)^{2}}$
したがって,回路に加える外力の大きさは$\dfrac{B^{2}L^{3}}{6RT}\left(2-\dfrac{t}{T}\right)^{2}[\rm N]$(答)
(3)
最後に,$2T<t<3T$のときは,上図のような誘導起電力が生じ,ダイオード$\rm D_{1}$,$\rm D_{2}$には逆方向に電流を流そうとするため,電流は流れません.
したがって,回路に力を加えなくとも,等速度運動します.
回路に加える力は$0[\rm N]$(答)
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