
今回も重心不変の問題です.
前回の内容はこちら.

図のように,水平でなめらかな床の上に質量$6m$の台車がある.台車の天井の中央Oに長さ$l$の軽い糸が結び付けられており,他端には質量$m$の物体が取り付けられている.台車を静止させた状態で糸を張ったまま天井の点Aに物体を動かし,静かにはなしたところ,物体と台車が運動をはじめた.ただし,物体の大きさは無視し,台車と物体は同一平面内を運動する.このとき,次の問いに答えよ.
(1) 物体が最下点Bに達したときについて,物体と台車は運動を開始してから水平方向にそれぞれどれだけ移動するか.
(2) 物体がAとは反対側の最高点Cに達したときについて,物体と台車は運動を開始してから水平方向にそれぞれどれだけ移動するか.
<解答>
(1)
はじめ,重心が静止していて,その後,ある成分について力の和が0であるとき,その成分の重心は静止したままである.

物体と台車の水平成分は張力しかはたらきません.
力の和が0となるので,重心は変化しません.

変位を利用した重心不変は次の2式を立てましょう.
重心不変の条件を満たすとき,次の2式を立てる.
1. 重心不変の式,つまり,重心の変化が0である式を立てる.
2. 相対変位の式
★ 重心不変の式
物体と台車の水平方向の変位をそれぞれ$\varDelta x$,$\varDelta X$とすると
$0=\dfrac{m\varDelta x+6m\varDelta X}{m+6m}$
$\therefore \varDelta X=-\dfrac{1}{6}\varDelta x$ $\dots (\ast)$

相対変位は,次のように図をかいて矢印を追うと簡単だね.

★ 相対変位の式
台車からみた物体の変位は$l$なので,
$\varDelta X+l=\varDelta x$ $\dots (2\ast)$
$(\ast)$,$(2\ast)$より
$\varDelta x=\dfrac{6}{7}l$ ,$\varDelta X=-\dfrac{1}{7}l$

したがって,物体は図の右向きに$\dfrac{6}{7}l$(答)移動し,台車は図の左向きに$\dfrac{1}{7}l$(答)移動します.
(2)

同様に,Cにおける物体の水平方向の変位を$\varDelta x^{\prime}$,台車の変位を$\varDelta X^{\prime}$とすると,重心不変より次の式が成り立ちます.
★ 重心不変の式
$0=\dfrac{m\varDelta x^{\prime}+6m\varDelta X^{\prime}}{m+6m}$
$\therefore \varDelta X^{\prime}=-\dfrac{1}{6}\varDelta x^{\prime}$ $\dots (3\ast)$

さらに,相対変位は次の図で考えましょう.

★ 相対変位の式
台車から見て物体は水平方向に$2l$だけ移動しているので
$\varDelta X^{\prime}+2l=\varDelta x^{\prime}$ $\dots (4\ast)$
$(3\ast)$,$(4\ast)$より
$\varDelta x^{\prime}=\dfrac{12}{7}l$,$\varDelta X^{\prime}=-\dfrac{2}{7}l$

したがって,物体は図の右向きに$\dfrac{12}{7}l$(答)移動し,台車は図の左向きに$\dfrac{2}{7}l$(答)移動します.

次回の内容はこちらです.
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[…] [演習]重心不変2NEKO今回も重心不変の問題です.前回の内容はこちら.問題… 問題 […]