
まず,点電荷がつくる電場と電位について確認しましょう.
電荷$Q$の点電荷が距離$r$につくる電場の大きさ$E$は,クーロンの比例定数を$k$として
$E=k\dfrac{|Q|}{r^{2}}$
また,正電荷の場合,点電荷から飛び出すように電場をつくり,負電荷の場合,点電荷に入りこむように電場をつくる.


電場の合成はベクトル計算です.
電荷$Q$の距離$r$における電位$V$は,クーロンの比例定数を$k$として
$V=k\dfrac{Q}{r}$
※ $|Q|$としないこと.

電位はスカラー計算をします.
電場と電位は似ているようで全く違います.
特に,計算方法の違いに注意して下の問題を解きましょう.

図のような$x$軸上の$x=a$の位置に電荷$Q$の点電荷が固定してあり,$x=-a$の位置には電荷$-2Q$が固定してある.クーロンの比例定数を$k$として次の問いに答えよ.ただし,$Q$,$a$はともに正の数である.
(1) $x$軸上で電場が0の位置を答えよ.
(2) $x$軸上で電位が0の位置を答えよ.
<解答>
(1)

まず,電場が0の場所はどこらへんにあるか目星をつけておきましょう.
普通,電場の計算は大きさと向きを別々に考えるからです.
場所によって電場の向きが変わっちゃうんだね.


上図をみてみましょう.
領域Iについて,$Q$がつくる電場は$x$軸の負の向き,$-2Q$がつくる電場は$x$軸の正の向きなので,うまく打ち消しそうな気がしますが,電場の大きさは電荷の絶対値が大きければ大きいほど大きくなり,距離が近いほど大きくなります.$-2Q$がつくる電場の大きさは電荷が$Q$より大きく,近いためどう考えても打ち消すことができません.
領域IIについて,$Q$,$-2Q$ともに$x$軸負の方向に電場をつくるので,0になりません.
一方,領域IIIは,$Q$の電荷は$x$軸正の向きに電場を作り,$-2Q$は負の方向に電場を作ります.また,$-2Q$の電荷は電荷の絶対値が大きい代わりに距離が遠いので,うまいこと打ち消すことができそうです.
★ 領域IIIにおいて,位置$x(a<x)$における合成電場の計算

電荷$Q$が位置$x$につくる電場の大きさは$k\dfrac{Q}{(x-a)^{2}}$,電荷$-2Q$が位置$x$につくる電場の大きさは,$k\dfrac{|-2Q|}{(x+a)^{2}}$なので,電場が0になる条件は
$\eqalign{\cancel{k}\dfrac{\cancel{Q}}{(x-a)^{2}}&=\cancel{k}\dfrac{2\cancel{Q}}{(x+a)^{2}}\cr 2(x-a)^{2}&=(x+a)^{2}\cr \sqrt{2}(x-a)&=\pm(x+a)}$
これを解いて,$x=(3+2\sqrt{2})a$ または $(3-2\sqrt{2})a$

2つ答えがでたけど,$x>a$を満たすのは,$x=(3+2\sqrt{2})a$(答)だね.
(2)

電位の計算では矢印をかかないことに注意しよう!


電荷$Q$は正の電位をつくり,$-2Q$は負の電位をつくるんだね.電位の絶対値も電荷$Q$の絶対値に比例するので,領域Iに電位が0になることはなさそう.
(領域Iでは電位が負になります.)
したがって,領域IIと領域IIIを考えればいいね.
その際,注意するのは,電荷に絶対値をつけて計算しないことと,$V=k\dfrac{Q}{r}$の$r$は距離であるということだよ.
★ 領域IIについて
$Q$が$x$の位置につくる電位は$k\dfrac{Q}{a-x}$(※$k\dfrac{Q}{x-a}$では×.$k\dfrac{Q}{|x-a|}$\ならOK),$-2Q$が位置$x$につくる電位は$k\dfrac{-2Q}{x+a}$なので
$k\dfrac{Q}{a-x}+k\dfrac{-2Q}{x+a}=0$
$\therefore x=\dfrac{a}{3}$
★ 領域IIIについて
$Q$が$x$の位置につくる電位は$k\dfrac{Q}{x-a},$-2Q$が位置$x$につくる電位は$k\dfrac{-2Q}{x+a}$なので
$k\dfrac{Q}{x-a}+k\dfrac{-2Q}{x+a}=0$
$\therefore x=3a$

したがって,電位が0になる位置は$x=\dfrac{a}{3}$,$3a$(答)です.
じつは,$-2Q$と$Q$からの距離の比が$2:1$である位置が電位が0になるので,電位が0になる点の軌跡は円となります.(アポロニウスの円)
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