今回は摩擦力がある場合の単振動です.摩擦力があってもやることは同じです.単振動の運動方程式を立て,中心座標と角振動数,周期を把握して,初期条件から振幅や位相を求めましょう.
前回の内容はこちら
それでは,さっそく問題を解きましょう.
<解答>
(1) 運動方程式を立てます.物体は$x=L$を出発してから$x$軸の負の方向に速度をもっているので,動摩擦力がはたらく向きは$x$軸の正方向です.位置$x$における加速度を$x$軸の正の向きに$a$と設定しましょう.加速度の向きは座標の向きと一致させておいたほうがよいです.運動方程式は
$ma=-kx+\mu mg=-k\left(x-\dfrac{\mu mg}{k}\right)$
なので,中心座標は$x_{0}=\dfrac{\mu mg}{k}$,角振動数は$\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$,周期は$T=2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$となります.
(2) 振幅に注意しましょう.
振幅は振動の端から中心までの距離です.今回は振動のスタートは$x=L$です.(静かにはなした→速度0ではなした→振動の端)さらに(1)で調べた通り,振動の中心は$x_{0}=\dfrac{\mu mg}{k}$なので,中心から右端までの距離は$L-\dfrac{\mu mg}{k}$となります.また,最大の位置から$x$軸の負の方向へスタートしているので$\cos$型です.したがって,時刻$t$における座標$x$は
$x=\dfrac{\mu mg}{k}+\left(L-\dfrac{\mu mg}{k}\right)\cos \sqrt{\dfrac{k}{m}}t$ $\cdots (\ast)$
(3) 振動の左端の位置は振幅$A$を使って$x_{0}-A$です.$A=L-\dfrac{\mu mg}{k}$なので,左端の位置$x_{\rm{L}}$は
$x_{\rm{L}}=\dfrac{2\mu mg}{k}-L$
となります.($\ast$)は座標$x$と時刻$t$の関係式なので,時刻を指定すると座標がわかりますし,座標を代入すると時刻を推定できます.そこで,$x_{\rm{L}}$を($\ast$)に代入してみましょう.
$\dfrac{2\mu mg}{k}-L=\dfrac{\mu mg}{k}+\left(L-\dfrac{\mu mg}{k}\right)\cos \sqrt{\dfrac{k}{m}}t$
$-\left(L-\dfrac{\mu mg}{k}\right)=\left(L-\dfrac{\mu mg}{k}\right)\cos \sqrt{\dfrac{k}{m}}t$
$\cos \sqrt{\dfrac{k}{m}}t=-1$
このような解は無数にありますが,一番小さい正の数$t$が$\tau$です.
$\sqrt{\dfrac{k}{m}}\tau=\pi$ $\therefore$ $\tau=\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$
つまり,周期$T$の半分ですね.このくらいの問題であれば,わざわざこのような大変な計算をしなくてもよいですが,確認のため計算してみました.
さて,もう1題です.
<解答>
(1) 問題7.1と違うのは斜面になったというだけではありません.$0 \leqq t\leqq \tau$の間は$x$軸の正方向に速度をもっているので,動摩擦力がはたらく向きは$x$軸の負の向きとなることに注意しましょう.また,動摩擦力の大きさは(動摩擦係数)×(垂直抗力)です.垂直抗力は$mg$ではありません.真面目に,斜面に垂直な方向のつり合いの式を立てて確認しましょう.
位置$x$(今回も$x>0$で考えました.動き出した瞬間は負の位置にいますが,しばらくすると物体は原点を超えて正の位置にいくはずです.$x<0$で考える場合は向きと大きさに注意です)における力を図示すると上のようになります.加速度は$x$軸の正方向にとって,運動方程式は
$ma=-kx-mg\sin \theta -\mu N$ $\cdots (\ast)$
また,垂直抗力の大きさを$N$として,斜面垂直な方向のつり合いの式は
$N=mg\cos \theta$ $\cdots (2\ast)$
($2\ast$)を($\ast$)に代入して$N$を消去すると
$\eqalign{ma&=-kx-mg\sin \theta -\mu mg\cos \theta\\&=-k\left(x+\dfrac{\sin \theta +\mu\cos \theta}{k}mg\right)}$
この運動方程式より,中心座標は$x_{0}=-\dfrac{\sin \theta +\mu \cos \theta}{k}mg$,角振動数は$\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$,周期は$T=2\pi\sqrt{\dfrac{m}{k}}$となります.
(2) 中心が$x_{0}=-\dfrac{\sin \theta +\mu \cos \theta}{k}mg$,左端が$x=-L$なので振幅$A$は
$A=x_{0}-(-L)=-\dfrac{\sin \theta +\mu \cos \theta}{k}mg+L$
となります.また,最小の位置から$x$軸の正方向へスタートするので$-\cos$型です.したがって,時刻$t$における物体の位置$x$は
$x=-\dfrac{\sin \theta +\mu \cos \theta}{k}mg-\left(L-\dfrac{\sin \theta +\mu \cos \theta}{k}mg\right)\cos\sqrt{\dfrac{k}{m}}t$
となります.
かなり,複雑な答えになりましたね.複雑な問題になっても,何をすればよいのか忘れずに!
次回の内容はこちら
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