$LC$振動回路 回路の式を立て,単振動の運動方程式と見比べる

分野別
PHYさん
PHYさん

今回は,$LC$振動回路について説明します.

入試問題でも割とよくみかけますが,とっつきにくい印象があるかもしれません.

直観的な理解の仕方もありますが,ここでは回路の式を立て,単振動の運動方程式と見比べることで,電流や電圧の時間変化を求めていきたいと思います.(微分方程式を書きますが,それを解くわけではなく,あくまでも単振動の運動方程式と比較するだけです.)

PHYさん
PHYさん

電気容量$C$のコンデンサー,自己インダクタンス$L$のコイル,スイッチを上図のようにつなげます.あらかじめコンデンサーには電荷$Q_{0}$が蓄えられているとしましょう.

Aに対するBの電位を$V$,この回路を時計回りに流れる電流を$i$とします.

時刻$t=0$でスイッチを閉じましょう.

PHYさん
PHYさん

時刻$t$において,コンデンサーには電荷$q$が蓄えられています.また,回路には$i$の電流が流れているとしましょう.

まず,コンデンサーの基本式からAに対するBの電位$V$を求めます.

★ コンデンサーの基本式

$q=CV$

$\therefore V=\dfrac{q}{C}$ $\dots (\ast)$

PHYさん
PHYさん

また,コイルに電流$i$が流れると,電流が流れる向きに$-L\dfrac{di}{dt}$の起電力が生じます.

これは,回路中のコイルの問題でよく使うので確認しておいてください.

なぜ,このように「-」がつくのかは,下の記事で説明しています.

すると,$(\ast)$から,キルヒホッフ則より

★ キルヒホッフ則

$\dfrac{q}{C}-L\dfrac{di}{dt}=0$ $\dots (2\ast)$

PHYさん
PHYさん

また,時間$\varDelta t$の間にコンデンサーの電荷が$\varDelta q$変化したとき,電流$i$は次のようになります.

$i=-\dfrac{\varDelta q}{\varDelta t}$

NEKO
NEKO

え?なんで,「$-$」がつくの?

PHYさん
PHYさん

今回は,微分方程式を立てたいので,$\varDelta t\to 0$として,

$i=-\dfrac{dq}{dt}$ $\dots (3\ast)$

とします.

$(3\ast)$を$(2\ast)$に代入すると

$\eqalign{\dfrac{q}{C}-L\dfrac{d}{dt}\left( -\dfrac{dq}{dt} \right)=0\cr L\dfrac{d^{2}q}{dt^{2}}=-\dfrac{1}{C}q  \dots (\sharp)}$

NEKO
NEKO

これは,単振動の運動方程式

$ma=-kx$

の形になっているね.加速度は位置$x$の2階微分だから

$a=\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}$

なので,

$m\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=-kx$

この単振動の角振動数$\omega$は

$\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$

だったね.

単振動を忘れてしまった人は,こちらのシリーズで演習問題があるので,確実に解けるようにしておこう.

NEKO
NEKO

$ L\dfrac{d^{2}q}{dt^{2}}=-\dfrac{1}{C}q $

だから,コンデンサーに蓄えられる電荷は時間$t$とともに単振動の時間変化と同様な変化をするんだね.コンデンサーにはもともと電荷$Q_{0}$が蓄えられていて,これがmaxのはずだから,スイッチを入れた直後は電荷は減るね.つまり,$\cos$型だ!

角振動数$\omega$は,

$\omega=\sqrt{\dfrac{1}{LC}}$

だから,時刻$t$におけるコンデンサーに蓄えられている電荷$q$は

$q=Q_{0}\cos\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t\right)$ $\dots (4\ast)$

になるね.

PHYさん
PHYさん

$(4\ast)$を$(3\ast)$に代入して

$\eqalign{i&=-\dfrac{d}{dt}\left( Q_{0}\cos\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t\right)\right)\\&=-Q_{0} \left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t \right) ^{\prime}\left\{-\sin\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t \right)\right\} \\&=\dfrac{Q_{0}}{\sqrt{LC}}\sin\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t \right)}$

NEKO
NEKO

$I_{0}= \dfrac{Q_{0}}{\sqrt{LC}} $とおくと

$i=I_{0} \sin\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t \right) $

となるね.

PHYさん
PHYさん

また,$(4\ast)$を$(\ast)$に代入すると電位$V$がわかります.

$(4\ast)$を$(\ast)$に代入して

$V=\dfrac{q}{C}= \dfrac{Q_{0}}{C}\cos\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t\right) $

NEKO
NEKO

電流も電位も単振動しているんだね.

角振動数が$\omega=\dfrac{1}{\sqrt{LC}}$

だから,周期$T$は

$T=\dfrac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{LC}$

だね.

PHYさん
PHYさん

そうですね.

ちなみに,電流と電圧のグラフをかくと次のようになります.

赤い方は電圧(Aに対するBの電位),青い方は電流です.

電圧の最大値は$V_{0}$としています.

NEKO
NEKO

電圧の絶対値が最大になるときは,電流が0になって,電流の絶対値が最大になるときは,電圧が0になるんだね.

PHYさん
PHYさん

はい,このことは,エネルギー保存則でよく使います.

時刻$t$におけるコンデンサーの静電エネルギーとコイルの蓄えられているエネルギーの和$U$は次のようになります.

$\eqalign{U&=\dfrac{1}{2}CV^{2}+\dfrac{1}{2}Li^{2}\\&=\dfrac{1}{2}C\left\{ \dfrac{Q_{0}}{C}\cos\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t\right) \right\}^{2}+\dfrac{1}{2}L\left\{ \dfrac{Q_{0}}{\sqrt{LC}}\sin\left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t \right) \right\}^{2}\\&=\dfrac{Q_{0}^{2}}{2C}\left\{\cos^{2} \left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t\right) +\sin^{2} \left(\dfrac{1}{\sqrt{LC}}t\right) \right\}\\&=\dfrac{Q_{0}^{2}}{2C}}$

NEKO
NEKO

$\cos^2 (\omega t)+\sin^{2}(\omega t)=1$だから,$U$は時間に依らず一定になるんだね.

PHYさん
PHYさん

具体的な$LC$振動回路の問題は別にやりますが,ここでは,次のことを確認しておきましょう.

  • 電荷,電流,電圧はそれぞれ単振動する.
  • $\dfrac{1}{2}CV^{2}+\dfrac{1}{2}Li^{2}=$一定になる.

を確認しておきましょう.

※ ちなみに,今回は$q$の微分方程式から導きましたが,$(\ast)$~$(3\ast)$を$i$や$V$の微分方程式の形にすると

$L\dfrac{d^{2}i}{dt^{2}}=-\dfrac{i}{C}$

$L\dfrac{d^{2}V}{dt^{2}}=-\dfrac{V}{C}$

となり,いずれも同じ微分方程式となります.

コメント

  1. […] 直列合成すると,前回の内容と同様に考えることができます. […]

  2. […] $LC$振動回路 回路の式を立て,単振動の運動方程式と見比べるPHYさん今回… […]

  3. れおん より:

    お世話になっています。
    上から2個目の図のコンデンサーの下側の-qたまっている極板に対して同じように考えると、
    キルヒホッフの第二法則より
    (q/c)-L(di/dt)= 0
    電流が流れ込んでいる向きなので
    i=dq/dt
    になると思ったのですがこのまま計算を進めていくとy=Kxの形になってしまい-Kxの形になりません。示されている上側の極板に着目するやり方となぜ違うのか教えて欲しいです。

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