今回は応用問題です.
下図のように,片方のコンデンサーだけに電荷が蓄えられ,もう片方のコンデンサーの蓄えられている電荷が0からスタートする場合,電流の最大値はどのようになるのかを考えていきましょう.
似たような設定の問題として,
- 2021年 東京大学
- 2008年 東北大学
などがあります.
上側にあるコンデンサーの電気容量を$2C$,下側にあるコンデンサーの電気容量を$C$,コイルの自己インダクタンスを$L$としましょう.
で考えたように,スイッチを閉じた時刻を$t=0$として,時刻$t$における
- コンデンサーの式
- 電荷保存則
- キルヒホッフ則
- 電流の定義式
を考えてみたらいいのかな.
では,次のように設定しましょう.
時刻$t$における容量$2C$の電荷(上側を$+q_{1}$)を$q_{1}$,容量$C$の電荷を$q_{2}$とし,時計回りに電流$i$が流れているとしましょう.
それぞれの式を立てて,$q_{2}$の微分方程式を作るように計算していきたいと思います.
★ コンデンサの基本式
容量$2C , C$の電圧を$V_{1} , V_{2}$として
$q_{1}=2CV_{1}$ $\therefore V_{1}=\dfrac{q_{1}}{2C} \dots (\ast)$
$q_{2}=CV_{2}$ $\therefore V_{2}=\dfrac{q_{2}}{C} \dots (2\ast)$
★ 電荷保存則
$-q_{1}+q_{2}=-Q_{0}$ $\therefore q_{1}=q_{2}+Q_{0}$ $\dots (3\ast)$
★ 電流の定義式
$i=-\dfrac{dq_{1}}{dt}=-\dfrac{dq_{2}}{dt}$ $\dots (4\ast)$
★ キルヒホッフ則
$V_{1}+V_{2}-L\dfrac{di}{dt}=0$
$(\ast),(2\ast)$より
$\dfrac{q_{1}}{2C}+\dfrac{q_{2}}{C}-L\dfrac{di}{dt}=0$
$(3\ast)$と$(4\ast)$より,$q_{2}$に関する微分方程式をつくって
$\dfrac{1}{2C}\left( q_{2}+Q_{0} \right)+\dfrac{q_{2}}{C}-L\dfrac{d}{dt}\left( -\dfrac{dq_{2}}{dt} \right)=0$
$ \eqalign{\therefore L\dfrac{d^{2}q_{2}}{dt^{2}}&=-\left(\dfrac{1}{2C}+\dfrac{1}{C}\right)q_{2}-\dfrac{Q_{0}}{2C}\\&=-\dfrac{3}{2C}q_{2}-\dfrac{Q_{0}}{2C}\\&=-\dfrac{3}{2C}\left(q_{2}+\dfrac{Q_{0}}{3}\right)}$
この微分方程式は単振動の微分方程式
$m\dfrac{d^{2}x}{dt^{2}}=-k(x-x_{0})$
と同じだね.
ということは,この微分方程式からわかるのは
① $q_{2}$は$\sin $,$\cos$の時間変化をする.
② $q_{2}$の振動の中心は$-\dfrac{Q_{0}}{3}$・
③ 角振動数$\omega$は
$\omega=\sqrt{\dfrac{3}{2LC}}$
そうですね.$q_{2}$の時間変化はなんとなく予想できそうですが,ここでは,定数$A$と$\delta$を用いて
$q_{2}=-\dfrac{Q_{0}}{3}+A\sin(\omega t+\delta)$ $\dots (\sharp)$
とおいて,初期条件から,$A$や$\delta$を求めてみましょう.
★ $t=0$のとき,$q_{2}=0$を$(\sharp)$を代入して
$0=-\dfrac{Q_{0}}{3}+A\sin\delta$ $\dots (5\ast)$
★ $(\sharp)$を$(4\ast)$に代入して
$\eqalign{i&=-\dfrac{d}{dt}\left( -\dfrac{Q_{0}}{3}+A\sin(\omega t+\delta) \right)\\&=-A\omega \cos(\omega t+\delta)}$
ここで,$t=0$のとき,$i=0$より
$0=-A\omega\cos(\delta)$ $\therefore \cos(\delta)=0$
したがって,$\delta =\dfrac{\pi}{2} \dots (6\ast)$.これを$(5\ast)$に代入して
$ 0=-\dfrac{Q_{0}}{3}+A\sin\dfrac{\pi}{2} $
$A=\dfrac{Q_{0}}{3}$ $\dots (7\ast)$
$(6\ast)$,$(7\ast)$を$(\sharp)$を代入して
$\eqalign{q_{2}&= -\dfrac{Q_{0}}{3}+\dfrac{Q_{0}}{3}\sin(\omega t+\dfrac{\pi}{2})\\&= -\dfrac{Q_{0}}{3}+\dfrac{Q_{0}}{3} \cos(\omega t)} \dots (8\ast)$
$(8\ast)$を$(3\ast)$に代入して$q_{1}$を求めると
$\eqalign{q_{1}&=q_{2}+Q_{0}\\&= -\dfrac{Q_{0}}{3}+\dfrac{Q_{0}}{3} \cos(\omega t) +Q_{0}\\&=\dfrac{2}{3}Q_{0}+\dfrac{Q_{0}}{3}\cos(\omega t)}$
また,$(8\ast)$を$(4\ast)$に代入すると
$\eqalign{i&=-\dfrac{dq_{2}}{dt}\\&=-\dfrac{d}{dt}\left( -\dfrac{Q_{0}}{3}+\dfrac{Q_{0}}{3} \cos(\omega t) \right)\\&=\dfrac{Q_{0}\omega}{3}\sin(\omega t)}$
回路に流れる電流,それぞれのコンデンサーの電荷$q_{1} , q_{2}$の時間変化をかくと次のようになります.
ポイントは
「電流の絶対値が最大のとき,それぞれのコンデンサーの電荷は振動の中心」
である,ということです.ただ,コイルに流れる電流が最大になるときに,コンデンサーに蓄えられる電荷は0になりません.
今回は,微分方程式を解くことで,電流の最大値が
$\dfrac{Q_{0}\omega}{3}=\dfrac{Q_{0}}{\sqrt{6LC}}$
になることを計算しました.
しかし,入試本番でこのようなやり方で解くのはなかなか大変かと思います.
そこで,次回は微分方程式を立てないで解く方法について扱いたいと思います.
最後に,$-q_{1}$と$q_{2}$の時間変化をかくと次のようになります.
コメント