今回は熱力学でも苦手になりがちな「気体分子運動論」を扱いたいと思います.
気体分子運動論の難しいところは
結論に至るまでの計算が非常に多い
ところではないかと思います.
1つ1つの計算は大したことではないのですが,量が多いと複雑な問題に感じることが多々あります.これを解消するには,1つ1つの計算をスムーズにできることと問題をたくさん解いて慣れることです.
今回は「基礎の基礎1」ということで,壁に与える力積や平均の力の話をします.
気体分子運動論の流れはもう少し先になるので,お待ちください.
今回使う物理公式,法則
- はね返り係数の式
- 力積と運動量変化の関係
- 作用・反作用の法則
特に今回は動かない壁との完全弾性衝突を考えます.すると,上の公式において,$e=1$,$v_{2}=v_{2}’=0$として
$1=-\dfrac{v_{1}’-0}{v_{1}-0}$
$\therefore\,\, v_{1}’=-v_{1}$
となり,動かない壁との完全弾性衝突では,衝突後の向きが衝突前と逆になり,速度の大きさは衝突直前後で変化しない,ということがわかります.
運動量は(質量)$\times $(速さ)ではなく,(質量)$\times $(速度)であることに注意しましょう.
壁に与えられた力積や平均の力を求める問題
<解答>
(1)
さきほど考察したように,衝突直後の速さは変わらず,$4.0\,\rm m/s$
(答)のままです.
(2)
力積を直接計算することはできません.(力の大きさも衝突時間もわからないので)
そこで,
(力積)$=$(運動量変化) こちら
を用いて計算をしていきたいと思います.
衝突前の速度を正の方向とすると,衝突後の速度は$-4.0\,\rm m/s$なので,運動量は$3.0\times (-4.0)=-12\,\rm kg\cdot m/s$.また,衝突前の速度は$4.0\,\rm m/s$なので,運動量は$3.0\times 4.0=12\,\rm kg\cdot m/s$です.したがって,運動量変化は
運動量変化$=-12-(12)=-24\,\rm kg\cdot m/s$
となります.
したがって,物体の受けた力積の大きさは$24\,\rm kg\cdot m/s$(答)
(3)
壁が受ける力積の大きさは「作用反作用の法則」を使えばいいね.
物体が$24\,\rm kg\cdot m/s$の大きさの力積を受けるんだから,壁も$24\,\rm kg\cdot m/s$(答)の大きさの力積を物体から受けることになるね.
(4)
(3)で考えたように,1回衝突すると壁は$24\,\rm kg\cdot m/s$の大きさの力積を受けるんだから,$1000$回衝突したら
$24\times 1000=2.4\times 10^{4}\,\rm kg\cdot m/s$(答)
の大きさの力積を受けるね.
(5)
最後に平均の力です.
(4)で$10\,\rm s$の間に壁は$2.4\times 10^{4}\,\rm kg\cdot m/s$の大きさの力積を受けることがわかりました.
力積$=$力$\times$時間
なので,平均の力の大きさを$F\,[\rm N]$として,
$2.4\times 10^{4}=F\times 10$
$F=2.4\times 10^{3}\,[\rm N]$ (答)
と考えましょう.
実際,物体は壁に衝突したり,衝突しないときもあったりするかもしれないけど,それを含めて平均の力として考えているんだね.
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