平面波の速度を分解!?

分野別
PHYさん
PHYさん

今回は,平面波の誤った速度の分解についての話です。

まずは,以下の問題を解いてみてください。

問題

ある時刻で物体Pが波面②上にあり,静止している.波長$\lambda$の平面波が速さ$V$で移動しているとき,物体Pが波面②上にある状態から波面①にある状態にうつる時間を求めよ.ただし,物体Pによる平面波への影響はないものとする.

NEKO
NEKO

距離が$\lambda$で速さが$V$なんだから,求める時間は

$\dfrac{\lambda}{V}$ $\cdots (\ast)$

じゃないの?

PHYさん
PHYさん

はい.その通りです.

平面波の速度を分解せずに普通に考えてもらえば正解します.

しかし,下図のように,Oにおける速度Vを縦方向(OP方向)と横方向に分解してみるとどうでしょうか.

このとき,OPの距離は$\dfrac{\lambda}{\sin\theta}$となります.

また,OP方向の速度成分は$V\sin\theta$となります.

NEKO
NEKO

あれ!?

OPの距離が$\dfrac{\lambda}{\sin\theta}$で,OP方向の速度が$V\sin\theta$なら,「時間=距離÷速さ」より

時間$=\dfrac{\lambda}{\sin\theta}\div V\sin\theta=\dfrac{\lambda}{V\sin^{2}\theta}$ $\cdots (2\ast)$

となって,$\dfrac{\lambda}{V}$にならないね.

なんで違う答えになったんだろう?

PHYさん
PHYさん

下図をみてください.

平面波①があった場所の波は時間が経つにつれて,OからQの方向に進行していきます.

赤い点がOからQへ向かう方向の波,青の点がOQ方向の速度をOP方向に分解したものです.

これを見ると,赤い点がOからQに到着したとき,青い点はRまでしか辿りついていません.

NEKO
NEKO

確かに!

だったら,青い点がPにたどり着く時間を計算すればいいんじゃない?

PHYさん
PHYさん

いえ,それがまさに$(2\ast)$の時間の計算なのですが,下図のように青い点がPにたどり着くころには赤い点がさらに進んでしまっていて,波面が赤い点線のようになってしまいます.

あくまでも,Pに波面がたどり着く時間を求めるのですが,これでは見当違いの計算になってしまいます

PHYさん
PHYさん

これをたとえるなら,A君,B君,C君がいて,それぞれが一列に並んで,足に「ひも」を結びつけます.この「ひも」が波面だと思ってください.

A君,B君,C君は同じ速度で動きます.このとき,あくまでもPにたどりつくのはB君ではなく,C君です.C君がたどり着いたときに「ひも」(波面)がPに到着します.

NEKO
NEKO

なるほど!「ひも」自体がPに到着する時間を考えているのに,あまり意味がないB君の速度で考えていたわけか!

ということは,そもそも平面波の速度を分解することはできないということ??

PHYさん
PHYさん

そんなことはないです.

入試問題では,平面波の速度を分解することもよくあります

下図のように,黒の波面上の点Oから,単位時間で$\rm Q^{\prime}$まで移動したとしましょう.平面波の速度は$V$なので,

${\rm OQ^{\prime}}=V$

です.この間に,平面波は赤い点線まで移動しているので,「平面波」が縦方向に移動した距離は,$\dfrac{V}{\sin\theta}$,横方向に移動した距離は$\dfrac{V}{\cos\theta}$です.よって,縦方向の速度は$\dfrac{V}{\sin\theta}$となります.

このような速度の分解の仕方をすれば,$(\ast)$と同じ計算結果になります.

NEKO
NEKO

$\rm OP$間の距離が$\dfrac{\lambda}{\sin\theta}$で,平面波の$\rm OP$方向の速度が$\dfrac{V}{\sin\theta}$なので,求める時間は

$\dfrac{\lambda}{\sin\theta}\div \dfrac{V}{\sin\theta}=\dfrac{\lambda}{V}$

となるね!

PHYさん
PHYさん

その通りです.

なので,平面波の速度を分解するときは,ある1点の速度を分解するのではなく,平面波の波面が分解する方向にそれぞれどのような速度をもっているのかを考えましょう

最後に次の問題を解いておしまいにしましょう.

問題

上図のように,$y$軸負方向から時計回りに角度$\theta$の方向に($\theta$は0°より大きく90°より小さい)速さ$V$で伝わる波長$\lambda$の平面波がある.物体Pが速さ$v$で$y$軸正方向に移動している.このとき,Pが波面を通過してから次の波面を通過するまでの時間$t_{1}$を$V,v,\theta$を用いて表せ.ただし,物体Pは平面波に影響を与えない.

Pの速度を平面波の速度方向に分解した方が無難です(解答1).しかし,平面波の速度を分解して考えることもできます(解答2).

<解答1> 物体Pの速度を平面波の速度方向に分解する場合

Pの速度を平面波の速度方向に分解すると,この方向の速さは$v\cos\theta$となる.すると,(平面波の速度の方向についての)Pからみた平面波の速度は$v\cos\theta+V$であり,距離が$\lambda$であるから,求める時間は

$t_{1}=\dfrac{\lambda}{v\cos\theta+V}$(答)

<解答2> 平面波の速度を$x$方向と$y$方向に分解する場合

青の平面波が$V$移動したとき(青い点線),$y$軸負の方向に$\dfrac{V}{\cos\theta}$移動しているので,平面波の$y$方向の速度成分は$-\dfrac{V}{\cos\theta}$.

また,平面波とPの$y$方向に沿った距離は$\dfrac{\lambda}{\cos\theta}$である.($y$方向についての)Pからみた平面波の速度は$v+\dfrac{V}{\cos\theta}$なので,求める時間は

$t_{1}=\dfrac{\dfrac{\lambda}{\cos\theta} }{v+\dfrac{V}{\cos\theta}}$

分子分母に$\cos\theta$をかけて

$t_{1}=\dfrac{\lambda}{v\cos\theta+V}$(答)

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