“単振動のエネルギー”は普通の力学的エネルギーとは違うの?
同じであることもありますが,基本的には違います.単振動のエネルギーは単振動の運動方程式
$ma=-k(x-x_{0})$
を
$\dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2=$一定
と変形したものです.
たとえば,ばねによる単振動だったら,中心が自然長じゃないときは,$\dfrac{1}{2}k(x-x_{0})^2$は弾性エネルギーじゃないんだね.
単振動の運動方程式から変形しているということは,摩擦力がはたらいても,単振動のエネルギーは保存するっていうこと?
はい.保存します.なので,単振動のエネルギー保存は
① 運動方程式を立てる
② 運動方程式からエネルギー保存をつくる
のステップで立てるとよいでしょう.②のステップはまともに考えると難しいので,形を覚えておくとよいでしょう.
では,単振動のエネルギー保存の導出の説明をします.
<準備>
時刻$t$において物体の座標が$x$,速度が$v$,加速度が$a$のとき,次の関係が成り立ちます.
$va=\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}v^2)$,$vx=\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}x^2)$
理由は,実際にそれぞれの右辺を計算してみればよいでしょう.
$\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}v^2)=\dfrac{1}{2}\cdot 2v\cdot a=va$
$\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}x^2)=\dfrac{1}{2}\cdot 2x\cdot v=va$
この計算は合成関数の微分を使っています.また,$\dfrac{dv}{dt}=a$,$\dfrac{dx}{dt}=v$も使いました.ちなみに,次のような形にも変形できます.
$v(x-x_0)=\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}(x-x_{0})^2)$
こちらも確認しておきましょう.
$\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}(x-x_{0})^2)=\dfrac{1}{2}\cdot 2(x-x_0)v=v(x-x_0)$
<変形の仕方>
運動方程式$ma=-k(x-x_{0})$の両辺に$v$をかけます.(正確には内積をとる)
$mva=-kv(x-x_0)$
ここで<準備>で確認した変形をします.$m$や$v$も中に入れてしまいましょう.
$\eqalign{\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}mv^2)&=-\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2)\cr\dfrac{d}{dt}(\dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2)&=0\cr \dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2)&=一定}$
これで完成です.さて,割と複雑な変形なので,問題を解くときにこれを頭を使って計算したのでは大変です.なので,運動方程式
$ma=-k(x-x_0)$
の形をみたら
$\dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}k(x-x_0)^2=$一定
と変形できるということをあらかじめ覚えておくとよいでしょう.
それでは,変形の練習です.
<解答>
(1) $\dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}kx^2=$一定
(2) $\dfrac{1}{2}Mv^2+\dfrac{1}{2}k(x-\dfrac{Mg}{k})^2=$一定
(3) $\dfrac{1}{2}(M+m)v^2+\dfrac{1}{2}k(x-\dfrac{M+m}{k}g)^2=$一定
(4) $\dfrac{1}{2}mv^2+\dfrac{1}{2}k(x-\dfrac{\mu mg}{k})^2=$一定
(5) $\dfrac{1}{2}\rho Sh v^2+\dfrac{1}{2}\rho_{0}Sgx^2=$一定
なるほど,こうやって変形するんだ!
次から単振動のエネルギー保存を使ってみよう!
次回の内容
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