
気柱の共鳴実験を行う際,ガラス管を固定し,水を入れて水だめを上下されることで,ガラス管内の水面の位置を調節します.
今回は,気柱の共鳴実験の話ではなく,ガラス管内の水面を$\varDelta l$下に移動させるには,水だめを下にどのくらい下げればいいかについて話をします.


え!?ガラス管内の水面を$\varDelta l$だけ下げたければ,単純に水だめを$\varDelta l$下げればいいんじゃないの?

いえ,そのようにはなりません.
仮にガラス管も水だめも円柱型をしていると仮定したとき,ガラス管の底面の半径を$r$,水だめの底面の半径を$R$とするとして,計算してみましょう.


まず,座標を設定します.
はじめの水面の位置を原点$\rm O$として,鉛直下向きに$y$軸をとります.このときの水だめの底面の位置を$y=H_{0}$とします.
水だめを下にゆっくり移動させると,水だめの水面とガラス管内の水面の高さは常に等しくなります.
ガラス管内の水面の座標が$y=l_{1}$,このときの水だめの底面の座標を$y=H_{1}$としましょう.

水面の高さが同じになるのは,水だめもガラス管内の水も上からは大気が押す力しかはたらいていないからだね.


はじめ,水だめにある水の深さは,$H_{0}$でした.これが,移動後$H_{1}-l_{1}$になります.
なので,円柱の体積が$(底面積)\times (高さ)$を使って水だめの水の体積の増加分$\varDelta V$は
$\varDelta V=\pi R^{2}\times \left\{(H_{1}-l_{1})-H_{0} \right\} \cdots (\ast)$
一方,ガラス管内の水の体積の減少分$\varDelta V’$は
$\varDelta V’=\pi r^{2}\times l_{1} \cdots (2\ast)$
です.

ガラス管内の水面の変位が$\varDelta l=l_{1}$で,水だめ自体の変位が$\varDelta L=H_{1}-H_{0}$なので,$(\ast),(2\ast)$はそれぞれ,次のようにかけるね.
$\varDelta V=\pi R^{2}(\varDelta L-\varDelta l) \cdots (\ast)’$
$\varDelta V’=\pi r^{2}\varDelta l \cdots (2\ast)’$

そうですね.ガラス管の水の体積の減少分は水だめ内の水の体積の増加分に等しいので
$\varDelta V=\varDelta V’$
です.このことから,$\varDelta L$と$\varDelta l$の関係を求めてみましょう.
★$\varDelta V=\varDelta V’$と$(\ast)’,(2\ast)’$より
\begin{align} &\cancel{\pi} R^{2}(\varDelta L-\varDelta l)=\cancel{\pi} r^{2}\varDelta l\\ &\therefore R^{2}(\varDelta L-\varDelta l)=r^{2}\varDelta l\\ &\therefore \varDelta L=\textcolor{red}{\left\{1+\left(\dfrac{r}{R} \right)^{2} \right\}\varDelta l} \end{align}

たとえば,$R=4r$で,ガラス管の液面を$\varDelta l=16\,\rm cm$下に移動させた場合は
\begin{align} \varDelta L&=\left\{1+\left(\dfrac{r}{4r}\right)^{2}\right\}\times 16\\ &=\left(1+\dfrac{1}{16}\right)\times 16=16+1=17\,[\rm cm] \end{align}
分水だめを下に移動させればいいってことだね.(どちらも水がある場所が一定の底面積の円柱と見なしたとき)
こう考えると,水だめの半径はガラス管の半径に比べて大きい方が使いやすそうだね.
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