前回の内容はこちらです.
今回は,抵抗の抵抗値や電流計,電圧計の内部抵抗が文字の場合の計算を扱います.
<解答>
前回同様に,図1では,抵抗に流れる電流は電流計で測定した値と同じだけど,電圧計で測定した電圧の値は,電流計の内部抵抗で落ちた電圧の分も測定してしまっているから,実際に抵抗Rにかかる電圧とは異なる(抵抗は赤と緑の電位差,電圧計は赤と青の電位差)んだったね.
そして,図2では,電圧計にかかる電圧と抵抗Rにかかる電圧は同じ(どちらも赤と黄色の電位差)なんだけど,電流計の値は,電圧計に流れた電流の分も余計に測定しているから,実際に抵抗Rに流れる電流とは異なるんだね.
図1において,電流計で測定した電流の値を$I_{1}[\rm A]$,電圧計で測定した電流の値を$V_{1}[\rm A]$.
また,図2において,電流計で測定した電流の値を$I_{2}\, [\rm A]$,電圧計で測定した電流の値を$V_{2}\, [\rm V]$とします.
図1では,「電圧計にかかる電圧と,抵抗Rと電流計にかかる電圧の和が同じ」であることから,$I_{1}$と$V_{1}$の関係式をつくます.
同様に図2では,「電流計に流れる電流と,抵抗Rと電圧計に流れる電流の和が同じ」であることから$I_{2}$と$V_{2}$の関係をつくります.
どちらも上図のピンク色で囲まれた部分に着目してください.
★ 図1において,電圧計にかかる電圧と,抵抗Rと電流計にかかる電圧の和が同じであることから
$V_{1}=RI_{1}+r_{\rm A}I_{1}$
$\therefore V_{1}=(R+r_{\rm A})I_{1}$ $\cdots (\ast)$
★ 図2において, 電流計に流れる電流と,抵抗Rと電圧計に流れる電流の和が同じ であることから
$I_{2}=\dfrac{V_{2}}{R}+\dfrac{V_{2}}{r_{\rm V}}$
$\therefore V_{2}=\dfrac{Rr_{\rm V}}{R+r_{\rm V}}I_{2}$ $\cdots (2\ast)$
(1)
★ 図1について
測定値を用いて計算した抵抗値を$R_{1}$とすると,$(\ast)$から
$\eqalign{R_{1}&=\dfrac{V_{1}}{I_{1}}\\&=\dfrac{ (R+r_{\rm A})I_{1} }{I_{1}}\\&=(R+r_{\rm A}) [\Omega]}$
したがって,相対誤差$\dfrac{|R_{1}-R|}{R}$は
$\eqalign{\dfrac{|R_{1}-R|}{R}&=\dfrac{(R+r_{\rm A})-R}{R}\\&=\dfrac{r_{\rm A}}{R}}$ (答)
★ 図2おいて, 測定値を用いて計算した抵抗値を$R_{2}$とすると,$(2\ast)$から
$\eqalign{R_{2}&=\dfrac{V_{2}}{I_{2}}\\&=\dfrac{ \dfrac{Rr_{\rm V}}{R+r_{\rm V}}I_{2} }{I_{2}}\\&=\dfrac{Rr_{\rm V}}{R+r_{\rm V}} [\Omega]}$
したがって,相対誤差$\dfrac{|R_{2}-R|}{R}$は
$\eqalign{\dfrac{|R_{2}-R|}{R}&=\dfrac{ |\dfrac{Rr_{\rm V}}{R+r_{\rm V}} -R|}{R}\\&=\dfrac{R}{R+r_{\rm V}}}$ (答)
相対誤差は$R$と$r_{\rm A}$と$r_{\rm V}$の値によって変わってくるんだね.
図1では,$r_{\rm A}$はなるべく小さい方がいいし,図2では,$r_{\rm V}$がなるべく大きい方がいいんだね.
(2)
図1において,測定値を用いて計算した消費電力を$P_{1}$とする.
$P_{1}=I_{1}V_{1}$
一方,実際の消費電力$P$は電流計の値のみが正しいので,
$P=I_{1}^{2}R$
である.(抵抗にかかる真の電圧を$v$とするとき,$P=I_{1}v$であるが,オームの法則より,$v=I_{1}R$から$v$を消去すると上式を得る.)したがって,相対誤差$\dfrac{|P_{1}-P|}{P}$は$(\ast)$も用いて
$\eqalign{\dfrac{|P_{1}-P|}{P}&=\dfrac{\cancel{I_{1}}V_{1}-I_{1}^{\cancel{2}}R}{I_{1}^{\cancel{2}}R}\\&=\dfrac{V_{1}-I_{1}R}{I_{1}R}\\&=\dfrac{(R+r_{\rm A})\cancel{I_{1}}-\cancel{I_{1}}R}{\cancel{I_{1}}R} (\because (\ast))\\&=\dfrac{r_{\rm A}}{R}}$ (答)
(2)
図2において,測定値を用いて計算した消費電力を$P_{2}$とする.
$P_{2}=I_{2}V_{2}$
一方,実際の消費電力$P$は電圧計の値のみが正しいので,
$P=\dfrac{V_{2}^{2}}{R}$
である.(抵抗Rに流れる真の電流を$i$とすると,$P=iV_{2}$であるが,オームの法則より,$V_{2}=iR$から,$i$を消去すれば上式を得る.)したがって,相対誤差$\dfrac{|P_{2}-P|}{P}$は,途中$(2\ast)$も用いて
$\eqalign{\dfrac{|P_{2}-P|}{P}&=\dfrac{|I_{2}\cancel{V_{2}}-\dfrac{V_{2}^{\cancel{2}}}{R}|}{\dfrac{V_{2}^{\cancel{2}}}{R}}\\&=\dfrac{|I_{2}R-V_{2}|}{V_{2}} (\because {\rm 分子分母}\times R)\\&=\dfrac{|\cancel{I_{2}}\cancel{R}-\dfrac{\cancel{R}r_{\rm V}}{R+r_{\rm V}}\cancel{I_{2}}|}{\dfrac{\cancel{R}r_{\rm V}}{R+r_{\rm V}}\cancel{I_{2}}} (\because (2\ast))\\&=\dfrac{R}{r_{\rm V}}}$ (答)
計算はちょっと大変だったけど,なにが正しい値なのかを判定できれば大丈夫そうだね.
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