
ホイートストンブリッジ回路の条件は,有名なので知っている人も
多いでしょう.
今回は,ホイートストンブリッジ回路の検流計に電流が流れる場合,抵抗の値によって,どちら方向に電流が流れるのかについての話をします.

上図に回路において,スイッチを閉じたときに検流計に電流が流れなかった.
このとき,抵抗$R_{1}$,$R_{2}$,$R_{3}$,$R_{4}$の間に次の関係が成り立つ.
$\dfrac{R_{1}}{R_{2}}=\dfrac{R_{3}}{R_{4}}$
($R_{1}R_{4}=R_{2}R_{3}$)
逆に,上の抵抗の関係式が成り立つのであれば,検流計に電流は流れない.
ホイートストンブリッジ回路の検流計に電流が流れる向き

電流の流れる向きは,次のように決まります.

上図の回路において,検流計の内部抵抗や,電池の起電力には無関係に
$R_{1}R_{4}<R_{2}R_{3}$のとき,PからQへ電流が流れる
$R_{1}R_{4}>R_{2}R_{3}$のとき,QからPへ電流が流れる

のちに計算をしますが,次のようなイメージをもっておくとよいでしょう.


上図では,$R_{2}R_{3}>R_{1}R_{4}$のとき,$R_{2} , R_{3}$それぞれを抵抗が大きいと考えて(実際はそうとは限らないけど)$R_{3}$の抵抗を避けるようにPからQへ流れているんだね.
※ PからQへ流れているだけで$R_{3}$や$R_{2}$の抵抗にも電流は流れます.

はい.では,$R_{1}R_{4}>R_{2}R_{3}$ではどうなるでしょうか.


$R_{1}$,$R_{4}$を抵抗が大きいと考えて,$R_{4}$を避けるように,$R_{3}$に流れるのかな.

そういうことです.
では,次に,本当にこの条件でいいのかどうかを計算していきましょう.
証明

$R_{1}$に流れる電流を$i_{1}$,$R_{4}$に流れる電流を$i_{4}$,検流計に流れる電流を$I$(P→Qを正の向き)とします.電池の起電力は$V$,検流計の内部抵抗を$r$とします.
このように設定すると,キルヒホッフ第1法則より$R_{2}$に流れる電流は$i_{4}-I$,抵抗$R_{3}$に流れる電流は$i_{1}-I$となります.
ここで,
- A→P→B
- A→Q→B
- A→P→Q→A
の3つのキルヒホッフ則を立てます.
※ Bの電位を基準(0)とし,Aの電位を$V$とします.

★ A→P→B
$V-R_{1}i_{1}-R_{3}(i_{1}-I)=0$
$\eqalign{(R_{1}+R_{3})i_{1}&=R_{3}I+V\cr\\\therefore i_{1}&=\dfrac{R_{3}I+V}{R_{1}+R_{3}} \cdots (\ast)}$
★ A→Q→B
$V-R_{2}(i_{4}-I)-R_{4}i_{4}=0$
$\eqalign{(R_{2}+R_{4})i_{4}&=R_{2}I+V\cr\\\therefore i_{4}&=\dfrac{R_{2}I+V}{R_{2}+R_{4}} \cdots (2\ast)}$
★ A→P→Q→A
$V-R_{1}i_{1}-rI+R_{2}(i_{4}-I)=V$
$-R_{1}i_{1}+R_{2}i_{4}=(r+R_{2})I$ $\cdots (3\ast)$

$(\ast)$,$(2\ast)$を$(3\ast)$に代入して$I$について解きましょう.
$(\ast)$,$(2\ast)$を$(3\ast)$に代入して
$-R_{1}\cdot \dfrac{R_{3}I+V}{R_{1}+R_{3}}+R_{2}\cdot \dfrac{R_{2}I+V}{R_{2}+R_{4}}=(r+R_{2})I$
両辺$(R_{1}+R_{3})(R_{2}+R_{4})$をかけて
$-R_{1}(R_{2}+R_{4})(R_{3}I+V)+R_{2}(R_{1}+R_{3})(R_{2}I+V)=(R_{1}+R_{3})(R_{2}+R_{4})(r+R_{2})I$

展開し,$I$について整理しましょう.
$-R_{1}R_{3}(R_{2}+R_{4})I-R_{1}(R_{2}+R_{4})V+R_{2}^{2}(R_{1}+R_{3})I+R_{2}(R_{1}+R_{3})V=(R_{1}+R_{3})(R_{2}+R_{4})(r+R_{2})I$
$\eqalign{(R_{2}R_{3}-R_{1}R_{4})V&=(R_{1}+R_{3})\left\{(R_{2}+R_{4})(r+R_{2})-R_{2}^{2}\right\}I+R_{1}R_{3}(R_{2}+R_{4})I\\&=(R_{1}+R_{3})(R_{2}r+R_{4}r+R_{2}R_{4})I+R_{1}R_{3}(R_{2}+R_{4})I}$
ここで,$A= (R_{1}+R_{3})(R_{2}r+R_{4}r+R_{2}R_{4}) >0$,$B= R_{1}R_{3}(R_{2}+R_{4}) $とおくと
$(A+B)I=(R_{2}R_{3}-R_{1}R_{4})V$
$\therefore I=\dfrac{R_{2}R_{3}-R_{1}R_{4}}{A+B}V$

だから,$R_{2}R_{3}>R_{1}R_{4}$のとき,$I>0$で,$R_{2}R_{3}<R_{1}R_{4}$のとき,$I<0$となるんだね!
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