
上図のように,交流電源,抵抗値$R$の抵抗,自己インダクタンス$L$のコイルによって回路をつくる.
時刻$t$において,Gに対するAの電位が$V(t)=V_{0}\sin\omega t$であるとき,回路に流れる電流を求めたい.
回路に流れる電流を$i(t)=i_{0}\sin(\omega t+\phi)$とするとき,次の問いに答えよ.
(1) Bに対するAの電位$V_{\rm R}(t)$を$i_{0}$,$\omega$,$R$,$t$,$\phi$を用いて表せ.
(2) Gに対するBの電位$V_{\rm L}$を$i_{0}$,$\omega$,$L$,$t$,$\phi$を用いて表せ.
(3) Gに対するAの電位$V(t)$を$i_{0}$,$\omega$,$R$,$L$,$t$,$\phi$と定数$\delta(>0)$を用いて表せ.ただし,$\tan\delta$も求めること.
(4) (3)より,$i_{0}$を$V_{0}$,$R$,$L$,$\omega$を用いて表せ.
(5) $i(t)$を$V_{0}$,$R$,$L$,$\omega$,$t$,$\delta$を用いて表せ.
<解答>
(1)

交流では,最大値と位相のずれの2つを確認して解きましょう.
● 最大値について
回路素子にかかる電圧の最大値を$V_{0}$,流れる電流の最大値を$I_{0}$,リアクタンス(または抵抗)を$Z$とする.
このとき,次の関係が成り立つ.
$V_{0}=ZI_{0}$
$Z$は回路素子できまる.各周波数を$\omega$として
抵抗値$R$の抵抗のとき,$Z=R$
電気容量$C$のコンデンサーのとき,$Z=\dfrac{1}{\omega C}$
自己インダクタンス$L$のコイルのとき,$Z=\omega L$
● 位相のずれについて
1)電圧に対する電流の位相のずれ
抵抗:位相のずれはなし(オームの法則がいつでも成り立つ)
コンデンサー:$\dfrac{\pi}{2}$進む(電流が先に変化し,遅れて電荷が変化する)
コイル:$\dfrac{\pi}{2}$遅れる(電圧が先に変化し,遅れて電流が変化する)
2)電流に対するで電圧の位相のずれ
抵抗:位相のずれはなし(オームの法則がいつでも成り立つ)
コンデンサー:$\dfrac{\pi}{2}$遅れる(電流が先に変化し,遅れて電荷が変化する)
コイル:$\dfrac{\pi}{2}$進む(電圧が先に変化し,遅れて電流が変化する)

抵抗を流れる電流が$i(t)=i_{0}\sin(\omega t+\phi)$と設定されているときの電圧$V_{\rm R}(t)$を求めます.
抵抗にかかる電圧の位相と電流の位相は同じです.
また,電圧の最大値$V_{\rm R0}$,$i_{0}$,$R$には次の関係が成り立ちます.
$V_{\rm R0}=Ri_{0}$
以上のことから,$V_{\rm R}(t)$は次のようになります.
$V_{\rm R}(t)=Ri_{0}\sin(\omega t+\phi)$ (答)
(2)

抵抗とコイルには同じ電流が流れます.
コイルにかかる電圧の位相は,電流に対して$\dfrac{\pi}{2}$進みます.
コイルでは,先に電圧が変化し,その後に電流が変化します.
さらに,コンデンサーにかかる電圧の最大値を$V_{\rm L0}$とすると,次の関係が成り立ちます.
$V_{\rm L0}=\omega Li_{0}$
以上のことから,時刻$t$におけるGに対するBの電位$V_{\rm L}$は次のようになります.
$\eqalign{V_{\rm L}&=V_{\rm L0}\sin(\omega t+\phi+\dfrac{\pi}{2})\\&=\omega Li_{0}\cos(\omega t+\phi)}$ (答)
(3)

キルヒホッフ則より,
$V(t)=V_{\rm R}+V_{\rm L}$
です.途中,三角関数の合成を使ってまとめましょう.
$\eqalign{V(t)&=V_{\rm R}+V_{\rm L}\\&=Ri_{0}\sin(\omega t+\phi)+\omega Li_{0}\cos(\omega t+\phi)\\&=i_{0}\sqrt{R^{2}+(\omega L)^{2}}\sin(\omega t+\phi +\delta)}$ (答)
ただし,$\tan\delta =\dfrac{\omega L}{R}$ (答)
(4)

問題文で与えられた
$V(t)=V_{0}\sin\omega t$
と(3)で得た,
$V(t)=i_{0}\sqrt{R^{2}+(\omega L)^{2}}\sin(\omega t+\phi +\delta)$
を比較しましょう.
★ 最大値部分の比較
$V_{0}=i_{0}\sqrt{R^{2}+(\omega L)^{2}}$
$\therefore i_{0}=\dfrac{V_{0}}{\sqrt{R^{2}+(\omega L)^{2}}}$ (答)
★ 位相部分の比較
$\omega t=\omega t+\phi +\delta$
$\therefore \phi=-\delta$
(5)
$i_{0}=\dfrac{V_{0}}{\sqrt{R^{2}+(\omega L)^{2}}}$と$\phi=-\delta$を$i(t)=i_{0}\sin(\omega t+\phi)$に代入して
$i(t)=\dfrac{V_{0}}{\sqrt{R^{2}+(\omega L)^{2}}}\sin(\omega t-\delta)$ (答)
ただし,$\tan\delta =\dfrac{\omega L}{R}$
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