![](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2021/04/多重極板1-1020x1024.png)
図のように面積$S$の4枚の薄い金属板A,B,C,Dが平行に並べてあり,スイッチ$\rm S_{1}$,$\rm S_{2}$と,起電力$V$の電池E,アースが接続されている.AB,BC,CDの距離は$d$,$2d$,$d$であり,$d$は金属板の面積$S$に対して十分小さい.
はじめ,スイッチ$\rm S_{1}$,$\rm S_{2}$は開いており,すべての極板には電荷が蓄えられていなかった.以下,真空の誘電率を$\varepsilon_{0}$とする.
まず,スイッチ$\rm S_{1}$を閉じて十分時間が経過したところ,極板Aには電荷$Q(>0)$が蓄えられた.
(1) AB間,BC間,CD間の電場の大きさ$E_{\rm AB}$,$E_{\rm BC}$,$E_{\rm CD}$を$Q$,$\varepsilon_{0}$,$S$を用いて表せ.
(2) AD間の電位差が$V$であることを用いて,電荷$Q$を$\varepsilon_{0}$,$S$,$d$,$V$を用いて表せ.
次にスイッチ$\rm S_{1}$を開いた後にスイッチ$\rm S_{2}$を閉じて十分時間が経過した.
(3) AB間,BC間,CD間の電場の大きさ$E_{\rm AB}^{\prime}$,$E_{\rm BC}^{\prime}$,$E_{\rm CD}^{\prime}$を$Q$,$\varepsilon_{0}$,$S$を用いて表せ.
(4) Aの電位を$0$としたとき,Dの電位$V_{\rm D}$を$V$を用いて表せ.
<解答>
![PHYさん](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/09/人1.png)
平面に分布している電荷がつくる電場は次のようになります.
十分に広い平面に一様な電荷$Q$が分布している.
真空の誘電率を$\varepsilon_{0}$,平面の面積を$S$とするとき,電場の大きさ$E$は
$E=\dfrac{|Q|}{2\varepsilon_{0}S}$
これは,電場が距離によらず一定であることを意味している.
![](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/12/平面がつくる電場1.1-1024x536.png)
![](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/12/コンデンサー1.2-1024x1015.png)
![PHYさん](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/09/人1.png)
さらに,$+Q$,$-Q$の蓄えられた電荷がつくる電場によって,その内部の電場は$\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}$になり,外部の電場は0になります.
Aに電荷$Q$が蓄えられると,Bの左部分に$-Q$が蓄えられ,Bの電荷はもともと0だったので,電荷保存則より,Bの右側部分の電荷は$Q$になります.
すると,Cの左部分は電荷が$-Q$になり,Cの電荷保存則より,Cの右側部分の電荷が$Q$になり,その結果Dの電荷は$-Q$となります.
![](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2021/04/多重極板2-1024x570.png)
したがって,
$E_{\rm AB}=E_{\rm BC}=E_{\rm CD}=\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}$(答)
(2)
![PHYさん](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/09/人1.png)
電場の大きさと電位差の関係は次のようになります.
電場の大きさを$E$,距離$\Delta x$の電位差を$\Delta V$とするとき,次の関係が成り立つ.
$E=\left|\dfrac{\Delta V}{\Delta x}\right|$
★ キルヒホッフ(電圧降下の式)則
AB間,BC間,CD間の電位差の和が$V$なので,
$\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}\cdot d+\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}\cdot 2d+\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}\cdot d=V$
$\therefore Q=\dfrac{\varepsilon_{0}S}{4d}V$ (答)
(3)
![PHYさん](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/09/人1.png)
スイッチ$\rm S_{1}$が開かれているので,極板Dの電荷は$-Q$のままです.
すると,Cの右側電荷は$Q$となります.
また,スイッチ$\rm S_{2}$を閉じると,BC間の電位差は0となり,結果Bの右側とCの左側の電荷は0となります.
下図の点線部分の電荷保存則を考えれば,もともと電荷の和が0だったので,Bの左側部分の電荷は$-Q$となり,その結果Aの電荷は$Q$となります.
![](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2021/04/多重極板3-1024x727.png)
したがって,
$E_{\rm AB}^{\prime}=E_{\rm CD}^{\prime}=\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}$(答)
$E_{\rm BC}^{\prime}=0$(答)
(4)
![PHYさん](https://physicmath.net/wp-content/uploads/2020/09/人1.png)
電場がわかったので,電場の大きさと電位差の関係から,キルヒホッフ則を立てます.
★ キルヒホッフ(電圧降下の式)則
$0-\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}\cdot d-0\cdot 2d-\dfrac{Q}{\varepsilon_{0}S}\cdot d=V_{\rm D}$
$V_{\rm D}=-\dfrac{2Qd}{\varepsilon_{0}S}$
(2)で求めた$Q=\dfrac{\varepsilon_{0}S}{4d}V$を代入して
$V_{\rm D}=-\dfrac{2d}{\varepsilon_{0}S}\cdot \dfrac{\varepsilon_{0}S}{4d}V=-\dfrac{1}{2}V$ (答)
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