今回は2021年の早稲田大理工の[1],熱力学の問題の熱効率の計算のみを扱います.
熱力学の基本公式はこちらでも紹介しています.
<解答>
(1)
距離が$h_{1}$,$h_{2}$,$h_{3}$,$h_{4}$の状態をそれぞれ状態①,②,③,④と名付けましょう.
それぞれの状態は次のように変化しています.
状態①→②:断熱圧縮(断熱材でできている+温度調節器を作動させていない.)
状態②→③:定圧膨張(ピストンにはたらく力の情報が変化していない.)
状態③→④:断熱膨張(断熱材でできている+温度調節器を作動させていない.)
状態④→①:定圧圧縮(ピストンにはたらく力の情報が変化していない.)
熱力学の問題に慣れていれば,どのような変化をしているかは,簡単に見極められるでしょう.
縦軸が圧力$p$,横軸が体積$V$とした$pV$図をえがくと次のようになります.
熱効率$e$を計算するときに,せっかく①→②と③→④が断熱変化なので,仕事を計算するのではなく,熱量だけの式で計算しましょう.
②→③が吸熱過程,④→①が放熱過程だね.
それぞれの熱量を$Q_{23}$,$Q_{41}$とします.
まずは,$Q_{23}$からいきましょう.
今回は温度変化$\varDelta T$ではなく,体積$Sh$の方を使いたいので,あらかじめ内部エネルギーの式を変形しておきましょう.
$\varDelta U=nC_{v}\varDelta T$ $\dots (\ast)$
また,理想気体の状態方程式$pV=nRT$について,
$nT=\dfrac{pV}{R}$
より,圧力一定のとき
$n\varDelta T=\dfrac{p\varDelta V}{R}$ $\dots (2\ast)$
$(2\ast)$を$(\ast)$に代入すると
$\eqalign{\varDelta U&=nC_{v}\varDelta T\\&=C_{v}\dfrac{p\varDelta V}{R}\\&=C_{v}\dfrac{pS\varDelta h}{R}}$
★ 状態②→③の熱力学第一法則
$\eqalign{Q_{23}&=\varDelta U_{23}+W_{23}\\&=C_{v}\dfrac{\alpha pS(h_{3}-h_{2})}{R}+\alpha pS(h_{3}-h_{2})\\&=\dfrac{\alpha pS(C_{v}+R)(h_{3}-h_{2})}{R}}$
★ 状態④→①の熱力学第一法則
$\eqalign{Q_{41}&=\varDelta U_{41}+W_{41}\\&=C_{v}\dfrac{pS(h_{1}-h_{4})}{R}+pS(h_{1}-h_{4})\\&=-\dfrac{pS(C_{v}+R)(h_{4}-h_{1})}{R}}$
★ 熱効率
$\eqalign{e&=\dfrac{Q_{23}+Q_{41}}{Q_{23}}\\&=1+\dfrac{Q_{41}}{Q_{23}}\\&=1+\dfrac{-\dfrac{pS(C_{v}+R)(h_{4}-h_{1})}{R}}{\dfrac{\alpha pS(C_{v}+R)(h_{3}-h_{2})}{R}}\\&=1-\dfrac{h_{4}-h_{1}}{\alpha (h_{3}-h_{2})}}$
したがって,答は$e=1-\dfrac{h_{4}-h_{1}}{\alpha (h_{3}-h_{2})}$
(2)
状態①→②,および状態③→④は断熱変化なので,ポアソンの式を立てることができます.
★ ポアソンの式
状態①→②について
$p(Sh_{1})^{\gamma}=\alpha p(Sh_{2})^{\gamma}$
$h_{1}=\alpha^{\frac{1}{\gamma}}h_{2}$ $\dots (3\ast)$
状態③→④について
$p(Sh_{4})^{\gamma}=\alpha p(Sh_{3})^{\gamma}$
$h_{4}=\alpha^{\frac{1}{\gamma}}h_{3}$ $\dots (4\ast)$
$(3\ast)$と$(4\ast)$を(1)で得た熱効率$e$の式に代入しましょう.
$\eqalign{e&=1-\dfrac{h_{4}-h_{1}}{\alpha (h_{3}-h_{2})}\\&=1-\dfrac{\alpha^{\frac{1}{\gamma}}h_{3}-\alpha^{\frac{1}{\gamma}}h_{2}}{\alpha (h_{3}-h_{2})}\\&=1-\alpha^{\frac{1}{\gamma}-1}\\&=1-\alpha^{\frac{1-\gamma}{\gamma}}}$
したがって,答は,$e=1-\alpha^{\frac{1-\gamma}{\gamma}}$
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