気体分子運動論 基礎の基礎5

分野別
問題

図のように横幅$L$の断熱容器の中に質量$m$の気体分子が衝突を繰り返して往復運動をしている.気体分子は衝突面と垂直な速度をもっており,その速さは$v_{x}$である.衝突はすべて完全弾性衝突をするものとして次の問いに答えよ.

(1) 気体分子が1回衝突する際に壁に与える力積の大きさを求めよ.

(2) 気体分子が右側の壁と1回衝突するのにかかる時間を求めよ.

(3) 気体分子が時間$\varDelta t$の間に右側の衝突する回数を求めよ.

(4) 気体分子が$\varDelta t$の間に右側の壁に与える力積の総和を求めることで,$\varDelta t$の間に気体分子が右側の壁に与える平均の力の大きさを求めよ.

<解答>

(1) 壁は静止していて,完全弾性衝突をするので,衝突によって向きは変えるが速さは変化しない.

右側の壁に当たる直前の速度を$v_{x}$とすると,衝突後の速度は$-v_{x}$.

運動量変化と力積の関係より,気体分子が受ける力積は

気体分子が受ける力積$=m\times (-v_{x})-mv_{x}=-2mv_{x}=-2mv_{x}$

作用反作用の法則より,壁が受ける力積は$2mv_{x}$でその大きさも$2mv_{x}$(答)

(2) 

往復距離は$2L$なので,1回衝突するのにかかる時間は$\dfrac{2L}{v_{x}}$(答)

(3) 比例式を考える.時間$\varDelta t$の間に右側の壁と衝突する回数$A$は

$1\,[回数]\,:\,\dfrac{2L}{v_{x}}\,[時間]\,=\,A\,[回数]\,:\,\varDelta t\,[時間]$

$\therefore\,\, A=\dfrac{v_{x}}{2L}\varDelta t$(答)

(4) 1回の衝突で壁に与える力積の大きさが$2mv_{x}$で,これが$\varDelta t$の間に$\dfrac{v_{x}}{2L}\varDelta t$回ぶつかるので

力積の和$=2mv_{x}\times \dfrac{v_{x}}{2L}\varDelta t=\dfrac{mv_{x}^{2}}{L}\varDelta t$

力積の和を(平均の力)$\times \varDelta t$とみなす.平均の力の大きさを$F$とすれば

$F\varDelta t=\dfrac{mv_{x}^{2}}{L}\varDelta t$

$\therefore\,\, F=\dfrac{mv_{x}^{2}}{L}$(答)

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