<解答>
熱力学の問題で意識をして立てて欲しいのは,次の3つの式です.
(1)
気体の圧力を$p_{1}$として,ピストンのつり合いの式を立てましょう.
まずは,ピストンの重力.
そして,内部の気体が押す力は鉛直上向きに$p_{1}S$です.
外の空気は鉛直下向きに$p_{0}S$の力で押しています.
★ ピストンのつり合い
$p_{1}S=p_{0}S+mg$
$\therefore p_{1}=p_{0}+\dfrac{mg}{S}$ (答)
(2)
高さ$x$における圧力を$p_{x}$,体積を$V_{x}$として$p_{x}$と$V_{x}$の関係を調べます.
そのために,ピストンが高さ$x$にあるときのつり合いの式を立てます.
容器内の気体が押す力とピストンの重力,外の空気が押す力以外に,弾性力がはたらきます.
自然長からの伸びが$x-h$なので,弾性力の大きさは$k(x-h)$です.
★ つり合いの式
$p_{x}S=p_{0}S+mg+k(x-h)$
$\therefore p_{x}=p_{0}+\dfrac{mg}{S}+\dfrac{k}{S}(x-h)$ $\dots (\ast)$
また,$(\ast)$より,$x=\dfrac{3}{2}h$における圧力$p_{2}$は
$p_{2}=p_{0}+\dfrac{mg}{S}+\dfrac{kh}{2S}$
また,ピストンが高さ$x$にあるときの体積$V_{x}$は,$V_{x}=Sx$なので,$x=\dfrac{V(x)}{S}$なので$(\ast)$より次のようになります.
$\eqalign{p_{x}&=p_{0}+\dfrac{mg}{S}+\dfrac{k}{S}\left(\dfrac{V_{x}}{S}-h \right)\\&=\dfrac{k}{S^{2}}V_{x}+p_{0}+\dfrac{mg}{S}-\dfrac{kh}{S}}$ (答)
$p_{x}$$=\dfrac{k}{S^{2}}$$V_{x}$$+p_{0}+\dfrac{mg}{S}-\dfrac{kh}{S}$
なので,縦軸を圧力,横軸を体積とした$pV$図は正の傾きである直線です.
次のようなグラフになります.
(3)
気体がする仕事$W$は$pV$図の面積で求めます.
$\eqalign{W&=\dfrac{1}{2}\cdot \left(p_{0}+\dfrac{mg}{S}+p_{0}+\dfrac{mg}{S}+\dfrac{kh}{2S}\right)\cdot \left(\dfrac{3}{2}Sh-Sh\right)\\&=\dfrac{1}{2}p_{0}Sh+\dfrac{1}{2}mgh+\dfrac{1}{8}kh^{2}}$
これは,ピストンの力学的エネルギー変化と非保存力がした仕事の関係からも求めることができます.
重力の位置エネルギー変化と弾性力がする仕事の変化の和が大気圧がした負の仕事と気体がする仕事の和と等しいという式を立てます.
★ 力学的エネルギー変化=非保存力がした仕事
$mg\cdot \dfrac{1}{2}h+\dfrac{1}{2}k\cdot\left(\dfrac{1}{2}h\right)^{2}=W+\left(-p_{0}S\cdot \dfrac{h}{2}\right)$\\
$\therefore W=\dfrac{1}{2}p_{0}Sh+\dfrac{1}{2}mgh+\dfrac{1}{8}kh^{2}$
★ 内部エネルギー変化の式
$\eqalign{\varDelta U&=\dfrac{3}{2}\left\{\left(p_{0}+\dfrac{mg}{S}+\dfrac{kh}{2S}\right)\cdot \dfrac{3}{2}Sh-\left(p_{0}+\dfrac{mg}{S}\right)\cdot Sh\right\}\\&=\dfrac{3}{4}p_{0}Sh+\dfrac{3}{4}mgh+\dfrac{9}{8}kh^{2}}$
最後に,熱量は熱力学第一法則から求めましょう.
★ 熱力学第一法則
$\eqalign{Q&=\varDelta U+W\\&=\dfrac{1}{2}p_{0}Sh+\dfrac{1}{2}mgh+\dfrac{1}{8}kh^{2}+\dfrac{3}{4}p_{0}Sh+\dfrac{3}{4}mgh+\dfrac{9}{8}kh^{2}\\&=\dfrac{5}{4}p_{0}Sh+\dfrac{5}{4}mgh+\dfrac{5}{4}kh^{2}}$ (答)
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