今回は,斜面上の導体棒の運動です.
新しいことはありませんが,計算が複雑なのと,今までのことをしっかりと理解していないと,間違ってしまうので,必ず演習をしておくべき箇所です.
前回の問題はこちら
<解答>
毎回確認しているけど,基本は次の2つだよ.
特に,この問題は磁場と導体棒の速度が垂直な関係になっていないので注意!
導体棒の速度に対して垂直な磁束密度の成分は$B\cos \theta$だね.
だから,導体棒に生じる誘導起電力の大きさ$V$は
$V=vB\cos\theta l$
だね.
まずは,「1.回路の式」を立てるよ.
回路にあるのは,導体棒の誘導起電力と抵抗$R$だけ.
流れる電流を$i$と設定しましょう.
キルヒホッフの法則を立てれば次のようになるね.
$vBl\cos\theta=Ri$
$\therefore i=\dfrac{vBl\cos\theta}{R}$ $\dots (\ast)$
次に,「2.導体棒の運動方程式」を立てましょう.
導体棒が速度$v$で,斜面下向きに加速度$a$であるときを考えましょう.
はたらく力は,重力,垂直抗力,電磁力,動摩擦力です.
電磁力の間違いが多いので注意です.
誘導起電力が速度$v$に垂直な成分しかとらなかったので,電磁力も$B\cos\theta$のみを考える人が多いですが,電磁力は電流が磁場から受ける力です.
電流と磁束密度$B$は垂直な関係になっているので,そのままでOK.
フレミング左手の法則を使えば,上図の右方向に力がかかります.
斜面方向の運動方程式と,斜面に垂直な方向のつり合いの式を立てましょう.
垂直抗力は$N=mg\cos \theta$としないようにね!
★斜面垂直方向のつり合いの式
$N=mg\cos\theta +iBl\sin\theta$ $\dots (2\ast)$
★斜面方向の運動方程式
$ma=mg\sin\theta-\mu N-iBl\cos\theta$
$(2\ast)$の$N=mg\cos\theta +iBl\sin\theta$を代入して
$\eqalign{ma&=mg\sin\theta-\mu(mg\cos\theta +iBl\sin\theta)-iBl\cos\theta\\&=(\sin\theta-\mu\cos\theta)mg-iBl(\mu\sin\theta+\cos\theta)}$
$(\ast)$の$i=\dfrac{vBl\cos\theta}{R}$を代入して
$\eqalign{ma&=(\sin\theta-\mu\cos\theta)mg-\dfrac{vBl\cos\theta}{R}Bl(\mu \sin\theta+\cos\theta)\\&=-\dfrac{B^{2}l^{2}\cos\theta}{R}(\mu \sin\theta+\cos\theta)v+(\sin\theta-\mu\cos\theta)mg}$
もう一度書き直して
$ma=-\dfrac{B^{2}l^{2}\cos\theta}{R}(\mu \sin\theta+\cos\theta)v+(\sin\theta-\mu\cos\theta)mg$ $\dots (3\ast)$
かなり複雑な形に見えるけど,これは,運動方程式
$ma=-kv+C$
の形になっているよ.
この記事も参考にしてみてね.
つまり,$(3\ast)$の運動方程式の形から
十分時間が経つと加速度$a$が0になることがわかるよ.
$(3\ast)$に$a=0$を代入して
$0=-\dfrac{B^{2}l^{2}\cos\theta}{R}(\mu \sin\theta+\cos\theta)v+(\sin\theta-\mu\cos\theta)mg$
$\therefore$ $v=\dfrac{\sin\theta-\mu\cos\theta}{\mu\sin\theta+\cos\theta}\cdot\dfrac{mgR}{B^{2}l^{2}\cos\theta}$
(2) このとき,$(\ast)$の$i=\dfrac{vBl\cos\theta}{R}$より
$i=\dfrac{\sin\theta-\mu\cos\theta}{\mu\sin\theta+\cos\theta}\cdot \dfrac{mg}{Bl}$
なので,抵抗Rで消費される電力$P$は
$\displaystyle{\eqalign{P&=i^{2}R\\&=\left\{\dfrac{\sin\theta-\mu\cos\theta}{\mu\sin\theta+\cos\theta}\cdot \dfrac{mg}{Bl}\right\}^{2}R}}$
電流を求めるには,導体棒の斜面方向のつり合いを考えてもいいよ.
また,消費電力は
重力の仕事率+摩擦力の仕事率
でも出せます!
次回の内容はこちらです.
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