前回の内容はこちらです.
グラフの問題は「感覚的に選ぶ」のではなく,「式を立てて考察する」癖をつけましょう.
確認すべきことは,今までの導体棒の問題と一緒です.
★ キルヒホッフ則
導体棒が速度$v$(問題設定通り,導体棒が左方向に移動する方向を正とする.)で動いているときの起電力は$vBl$となる.(※もし,$v<0$であれば,起電力の向きが逆になる.)図のように,鉛直上から見たときに反時計回りに電流$i$が流れるとする.このとき,キルヒホッフ則は
$vBl-Ri=0$
$i=\dfrac{vBl}{R}$ $\cdots (\ast)$
(※もし$v<0$なら,$i<0$となり,電流が時計回りに流れることに対応する.つまり,わざわざ$v$の正負で場合分けをしなくてもよい.)
★ 運動方程式
速度$v$のときの導体棒およびおもりの加速度を$a$とする.張力の大きさを$T$として,導体棒およびおもりの運動方程式を立てると
$ma=-iBl-T$
$2ma=T-2mg$
2式を足して,$T$を消去すると
$3ma=-iBl-2mg$ $\cdots (2\ast)$
$(\ast)$を$(2\ast)$に代入して,$i$を消去すると
$3ma=-\dfrac{B^{2}l^{2}}{R}v-2mg$ $\cdots (\sharp)$
今回も終端速度型の運動方程式になったね.
ということは,$t=0$での$a\,(vtグラフの傾き)$を調べるのと,$t\to \infty$で$a$(傾き)が$0$という性質からグラフを選べばいいね.
$(\sharp)$の式に$t=0$のときの速度$v_{0}$を代入すると,$t=0$のときの$v-t$グラフの傾き(加速度$a_{0}$)がわかります.
$3ma_{0}= -\dfrac{B^{2}l^{2}}{R}v_{0}-2mg $
$\therefore a_{0}=-\dfrac{B^{2}l^{2}}{3mR}v_{0}-\dfrac{2}{3}g\,(<0)$
結果は複雑だけど,傾きが負であることがわかったね.
速度が小さくなっていくと,傾きの絶対値がだんだんと小さくなります.
そして,十分時間が経つと,傾きが$0$(加速度が$0$)になって,速度が変化しなくなります.このときの速度$v_{\infty}$は$(\sharp)$より
$0= -\dfrac{B^{2}l^{2}}{R}v_{\infty}-2mg $
$\therefore v_{\infty}=-\dfrac{2mgR}{B^{2}l^{2}}$
実は途中で,速度が$0$になって,導体棒とおもりは逆方向に動きます.速度が$0$になっても加速度は$-\dfrac{2}{3}g$($\sharp$に$v=0$を代入)なので,まだまだ速度変化がマイナスになるんだね.
ということで,次のようなグラフになります.
答えは③(答)
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