twitterの問題46の解答 折り曲げたコイルによる交流の発生

演習問題

<問題>

<解答>

導体棒が磁場中を動くときの誘導起電力を用いて計算する.

導体棒に生じる誘導起電力の公式(直線運動)

PQ間に生じる誘導起電力の大きさ$V_{\rm{PQ}}$は,PQの長さを$l$,PQ方向に垂直な速さを$v_{\perp}$,導体棒が動く方向と垂直な磁束密度の大きさを$B$とすれば,

$V=v_{\perp}Bl$

上図のようにP,Q,R,Sを定め(左上図),時刻$t$において角度$\omega t$回ったときについて考える.(右上図)

中心軸からP,QやS,Rまでの距離は$\dfrac{a}{2}$だから,円運動の半径と角速度と速さの関係より,PQ部分とSR部分はどちらも

$\dfrac{a}{2}\omega$

の速さで動いている最中である.

導体棒が磁場中を動いていると誘導起電力が生じる.その際,磁束密度に垂直な速度成分が誘導起電力に関係のあるものであるから,上図のように,PQ部分,SR部分の速度の磁束密度に垂直な成分を求めると,$\dfrac{a}{2}\omega\cos\omega t$,$\dfrac{a}{2}\omega\sin\omega t$となる.

まず,導体棒PQについて,磁束密度が図の右向きで,導体棒が磁場を垂直に切る速度が$\dfrac{a}{2}\omega \cos \omega$で,PQの長さが$b$なので,誘導起電力は

$\dfrac{a}{2}\omega\cos\omega t\times B\times b=\dfrac{Bab\omega }{2}\cos\omega t$

となる.同様に考えて,SR部分の導体棒に生じる起電力は

$\dfrac{Bab\omega }{2}\sin\omega t$

となる.誘導起電力の向きはレンツの法則(またはローレンツ力がはたらく向きで起電力の向きを調べる)で決まる.

したがって,aに対するbの電位はキルヒホッフの法則より

$\eqalign{V(t)&=\dfrac{Bab\omega}{2}\sin\omega t+\dfrac{Bab\omega}{2}\cos\omega t\\&=\dfrac{Bab\omega}{2}(\sin\omega t+\cos\omega t)\\&=\dfrac{\sqrt{2}Bab\omega}{2}\sin\left(\omega t+\dfrac{\pi}{4}\right)}$

となる.(答)

ちなみに,コイルを折り曲げないで,コイル面が磁場を垂直に貫く位置から回転させた場合は電位が$V(t)=Bab\omega \sin\omega t$になります.折り曲げる前(点線)と折り曲げた後(赤い実線)の時刻$t$と電位$V$のグラフは下図のようになります.

<別解>コイルの磁束変化による計算

上図より時刻$t$において,PQ部分の長方形とSR部分の長方形を垂直に貫く磁束はそれぞれ$B\sin\omega t$,$B\cos\omega t$となる.

そこで,ファラデーの電磁誘導の法則から誘導起電力を計算するが,次のことを確認しておく.

誘導起電力と向き

上図のように,コイルを貫く磁束が変化したとする.このとき,$\varPhi(t)$が増加した場合と減少した場合で場合を分けて計算をしなくてはならないが...

★ $\varPhi(t)$が上向きに増加する場合

レンツの法則より,右手親指を下に向けたときの4本指の方向に起電力が生じる.(上図の青色電池)その大きさは$\varDelta \varPhi>0$であることから

$|\dfrac{\varDelta\varPhi(t)}{\varDelta t}|=\dfrac{\varDelta \varPhi(t)}{\varDelta t}$

つまり,上からみて,時計回りに起電力$\dfrac{\varDelta \varPhi }{\varDelta t}$(上図赤色電池)のようになる.

★ $\varPhi(t)$が上向きで減少している場合

レンツの法則より,右手親指を上に向けたときの4本指の方向に起電力が生じる.(上図緑色電池)その大きさは$\varDelta \varPhi(t)<0$であることから

$|\dfrac{\varDelta \varPhi(t)}{\varDelta t}|=-\dfrac{\varDelta \varPhi(t)}{\varDelta t}$

上からみて反時計回りに大きさ$-\dfrac{\varDelta \varPhi(t)}{\varDelta t}$の電池ということは,時計回りに$\dfrac{\varDelta \varPhi(t)}{\varDelta t}$ともいえる.(上図赤色電池)

つまり,磁束が増加しても減少しても,同じ式の形になる.

よって,磁束の方向を増加の方向として考えても問題はない.

そこで

PQを含む長方形コイル部分は下向きに磁束が貫いているので,右手親指を上に向けたときの4本指の方向に起電力$\dfrac{d}{dt}\left(BS\sin\omega t \right)$,SRを含む長方形コイル部分は右向きに磁束が貫いているので,右手親指を左に向けたときの4本指方向に起電力$\dfrac{d}{dt}\left(BS\cos\omega t \right)$の電池を考えることができる.よって,aに対するbの電位$V(t)$は

$V(t)=\dfrac{d}{dt}(BS\sin\omega t)-\dfrac{d}{dt}\left(BS\cos\omega t \right)$

$S=\dfrac{ab}{2}$と$\dfrac{d}{dt}(\sin\omega t)=\omega \cos\omega t$,$\dfrac{d}{dt}(\cos\omega t)=-\omega \sin\omega t$より

$V(t)=\dfrac{Bab\omega }{2}\cos\omega t -\left(-\dfrac{Bab\omega }{2}\sin\omega t \right)=\dfrac{Bab\omega}{2}(\sin\omega t+\cos\omega t)$

この後は,最初の解き方で解いた方法と一緒です!

コメント

  1. かほ より:

    フィジクマスさん、いつも分かりやすくて勉強になる記事をありがとうございます。私は高校生の時からこのブログが大好きで物理の勉強のモチベーションになっています。浪人生の身分でも大変お世話になっています。
    お手数ですが、この折り曲げたコイルによる交流の発生をコイルを貫く磁束の変化で解説していただきたいです。(理論物理への道標で同様の問題があり少々気になる部分があったので)よろしくお願いします。

    • physicmath より:

      いつもご覧いただきありがとうございます。
      磁束変化による説明ですね。
      了解しました。

    • physicmath より:

      先ほど,磁束変化の解説を追加しました。
      おそらく,起電力の向きをどう考えればいいのかという疑問だったと思います。
      そこらへんを詳しく書いてみたので,読んでみてください。

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