
運動方程式シリーズ3回目.
今回は,2つの物体が接触している場合の運動方程式です.
よくある間違いを挙げながら解説していきたいと思います.

では,問題を解きましょう.前回の内容はこちらです.
また,運動方程式の簡単な復習もまとめておきます.
質量$m$の物体に力$F$がはたらいているとき,物体の加速度$a$をすると,次の関係式が成り立つ.
$ma=F$
これを運動方程式という.
運動方程式を立てる際には
1. +の向きを決め,その+の向きを加速度の向きとする.
2. 物体の速度の向きとは関係なく,はたらく力をかき,運動方程式を立てる.
3. 力の向きは1.で決めた正の方向であれば,正とし,負の方向に向いていれば負としてかく.

上図のようななめらかな水平面に質量$2.0\rm kg$,$3.0\rm kg$の物体A,Bがおかれている.
Aの左側より$10 \rm N$の力を加え続けたところ,物体A,Bは同じ加速度で運動をした.
このとき,次の問いに答えよ.
(1) AとBの間にはたらく力の大きさを$N$,物体A,Bの加速度を右方向を正として$a$とする.このとき,AとBそれぞれの運動方程式を立てよ.
(2) (1)の運動方程式より,加速度$a$とAとBの間にはたらく力の大きさ$N$を求めよ.
<解答>
(1)

まずは,力の図示だね.
力をかくときに注意して欲しいのは次のことです.
力を図示する流れ

1. 力を図示する物体をきめる.(以後,対象物体とよぶ.)

2. まず重力をかく.

3. 対象物体が他の物体と接触している部分に着目し,その場所にはたらく力をかく.

例:接触の相手によって,次のような力がはたらく.
面(床,物体,壁):垂直抗力と摩擦力
糸,ひも:張力
ばね:弾性力
※ 注意:外から対象物体にはたらく力を書き込むのであって,対象物体が相手側に及ぼす力を対象物体にかかないようにする.
下はダメな図

※ 勿論,対象物体が相手側に及ぼす力を相手の物体のところに図示するのはかまわない.
ただし,運動方程式やつり合いの式を立てる際には,あくまでも対象物体にはたらく力のみを式に入れる.


以上のことから力を図示します.


本当は重力や床との間の垂直抗力もあるのですが,図がごちゃごちゃになるので,AとBの間にはたらく水平方向の力のみかいてあります.
BがAに及ぼす力を青色で,AがBに及ぼす力を赤色で書いてあります.
また,次のような間違いをよく見るので,絶対にやらないでくださいね.


Aに$10 \rm N$の力を加えるからといって,Bにそのまま,$10 \rm N$の力が伝搬するとは限らないのです!
ニュートンの運動方程式を立てる際には,AとBの間にはたらく力は文字でおいて,式を解くことで求めます.

★ Aの運動方程式
$2.0\cdot a=10-N$ $\dots (\ast)$
★ Bの運動方程式
$3.0\cdot a=N$ $\dots (2\ast)$
$(\ast)+(2\ast)$より
$5.0a=10$ $\therefore a=2.0(\rm m/s^{2})$
さらに,$a=2.0$を$(2\ast)$に代入すると
$N=3.0\cdot 2.0=6.0(\rm N)$
したがって,答えは,$a=2.0(\rm m/s^{2})$,$N=3.0\cdot 2.0=6.0(\rm N)$

Aに加えた$10\rm N$がそのまま伝搬しないことも確かめることができたね!
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