物理のエッセンスでよく質問される問題を解説します.
問題文は物理のエッセンスを読んでください.
<解説>
この問題で一番質問されるのが,
「なぜ,筒外の水面と筒内の水面の差が$l_{2}$のままなのか?」
ということです.
この問題を考える際に,熱力学の問題で立てる3つの式を確認しましょう.
今回キーとなるのは,可動部分(というかつり合いを考える部分)が2箇所あるということです.
それは,
- 筒
- 筒内の水面
です.
それぞれにはたらく力を考えてみましょう.
筒自体にはたらく力(鉛直方向のみです.)は,「筒の重力」と「大気がおす力」と「筒内の気体がおす力」です.
このうち,たとえ筒内の気体を加熱しても「筒の重力」と「大気がおす力」は変化しません.
すると力のつり合いを考えれば,「筒内の気体がおす力」も変化しません.
つまり,筒を対象とした力のつり合いを考えることで,定圧変化であることがわかるわけです.
一方,筒内の水面にはたらく力は「筒内の気体がおす力」と「水がおす力」の2つです.
このうち,「筒内の圧力」は(筒内の空気の重さを考えないと仮定していると思うので,筒内部の上側をおす圧力も水面をおす圧力も同じはずです.)変化しないので,水面にはたらく力のつり合いを考えると,「水がおす力」も変化しません.
ところで,水圧は水の深さで決まります.(こちらを参照してください.
したがって,筒内の水圧が変化しないので,筒内の水面の深さは変化しません.
可動部分のつり合いからいろいろな情報が読み取れるんだね!
定圧変化なので,筒内の気体の圧力さえわかれば,A(筒内の気体)がした仕事は簡単に計算できます.
この問題では,筒自体の質量が与えられていないので,筒内の水面のつり合いを考えることで筒内の気体の圧力$P$を求めてみましょう.
水圧は次のステップで求めます.
- 知りたい水圧$P$と同じ深さの圧力のつり合いを考える.
- 深さが同じ場所では同じ水圧であることを利用して$P$を求める.
深さ$l_{2}$の圧力は大気圧$P_{0}$を合わせて
$P_{0}+\rho l_{2}g$
となります.したがって,水圧は
$P=P_{0}+\rho l_{2}g$
であり,筒内の水面のつり合いを考えれば,筒内の気体の圧力も$P=P_{0}+\rho l_{2}g$ (答)とわかります.
定圧変化なので,気体の体積変化を$\varDelta V$とすると,$W=P\varDelta V$です.
$\varDelta V=Sl_{3}$(問題文に筒内の気体の縦の長さが$l_{1}+l_{2}\to l_{1}+l_{2}+l_{3}$になると書いてある.)なので
$W=PSl_{3}=(P_{0}+\rho l_{2}g)Sl_{3}$ (答)
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