物理のエッセンス解説 熱-12

問題集・参考書解説
PHYさん
PHYさん

物理のエッセンスでよく質問される問題を解説します.

問題文は物理のエッセンスを読んでください.

<解説>

PHYさん
PHYさん

この問題で一番質問されるのが,

「なぜ,筒外の水面と筒内の水面の差が$l_{2}$のままなのか?」

ということです.

PHYさん
PHYさん

この問題を考える際に,熱力学の問題で立てる3つの式を確認しましょう.

熱力学の問題を立てる3つの式
  1. 可動部分のつり合いの式 → 力の情報が出てくる
  2. 理想気体の状態方程式(ボイルシャルルの法則)
  3. 熱力学第一法則 → エネルギーの情報が出てくる
PHYさん
PHYさん

今回キーとなるのは,可動部分(というかつり合いを考える部分)が2箇所あるということです.

それは,

  • 筒内の水面

です.

それぞれにはたらく力を考えてみましょう.

PHYさん
PHYさん

筒自体にはたらく力(鉛直方向のみです.)は,「筒の重力」と「大気がおす力」と「筒内の気体がおす力」です.

このうち,たとえ筒内の気体を加熱しても「筒の重力」と「大気がおす力」は変化しません

すると力のつり合いを考えれば,「筒内の気体がおす力」も変化しません

つまり,筒を対象とした力のつり合いを考えることで,定圧変化であることがわかるわけです.

一方,筒内の水面にはたらく力は「筒内の気体がおす力」と「水がおす力」の2つです.

このうち,「筒内の圧力」は(筒内の空気の重さを考えないと仮定していると思うので,筒内部の上側をおす圧力も水面をおす圧力も同じはずです.)変化しないので,水面にはたらく力のつり合いを考えると,「水がおす力」も変化しません

ところで,水圧は水の深さで決まります.(こちらを参照してください.

したがって,筒内の水圧が変化しないので,筒内の水面の深さは変化しません

NEKO
NEKO

可動部分のつり合いからいろいろな情報が読み取れるんだね!

PHYさん
PHYさん

定圧変化なので,筒内の気体の圧力さえわかれば,A(筒内の気体)がした仕事は簡単に計算できます.

この問題では,筒自体の質量が与えられていないので,筒内の水面のつり合いを考えることで筒内の気体の圧力$P$を求めてみましょう.

水圧は次のステップで求めます.

  1. 知りたい水圧$P$と同じ深さの圧力のつり合いを考える.
  2. 深さが同じ場所では同じ水圧であることを利用して$P$を求める.
PHYさん
PHYさん

深さ$l_{2}$の圧力は大気圧$P_{0}$を合わせて

$P_{0}+\rho l_{2}g$

となります.したがって,水圧は

$P=P_{0}+\rho l_{2}g$

であり,筒内の水面のつり合いを考えれば,筒内の気体の圧力も$P=P_{0}+\rho l_{2}g$ (答)とわかります.

定圧変化なので,気体の体積変化を$\varDelta V$とすると,$W=P\varDelta V$です.

$\varDelta V=Sl_{3}$(問題文に筒内の気体の縦の長さが$l_{1}+l_{2}\to l_{1}+l_{2}+l_{3}$になると書いてある.)なので

$W=PSl_{3}=(P_{0}+\rho l_{2}g)Sl_{3}$ (答)

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