前回から単振動の運動方程式を立てる練習をはじめました.運動方程式を立てる際は,次の3つのステップを忘れずに!
- 運動方程式を立てる対象物体と座標を決める.
- 座標の+の向きに加速度$a$を設定して,位置$x$における対象物体にはたらく力を図示する.
- 必要であれば,力を分解し運動方程式を立てる.
また,単振動を解く流れは以下のようになります.
- 運動方程式を立てて,中心座標,角振動数,周期を求める.
- 初期条件より,座標$x$の式を求める.
それでは,問題を解きましょう.今回は2題あります.
前回の内容はこちら
<解答>
(1) 物体が$y$の位置にあるときの加速度を座標の向きに$a$と設定する.物体にはたらく力を図示すると,$+y$方向に$mg$と$y>0$のとき$ky$が$-y$方向にかかるので,運動方程式は
$ma=mg-ky=-k\left(y-\dfrac{mg}{k}\right)$
したがって,中心座標$y_{0}$,角振動数$\omega$,周期$T$はそれぞれ
$y_{0}=\dfrac{mg}{k}$,$\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$,$T=2\pi \sqrt{\dfrac{m}{k}}$
(2) $y=0$で物体の速度が0でスタートするので,ここが振動のてっぺんになります.また,(1)より振動の中心が$y_{0}=\dfrac{mg}{k}$なので,振動の中心からてっぺんまでの距離,すなわち振幅$A$は,$A=\dfrac{mg}{k}$ということがわかります.
ここで,座標が下向きにとられていることに注意してください.今回の振動は座標としてもっとも小さいところから,上にスタートするので,$-\cos$型です.中心座標が$\dfrac{mg}{k}$なので,時刻$t$における物体の座標$y$は
$y=y_{0}-A\cos \omega t =\dfrac{mg}{k}-\dfrac{mg}{k}\cos \sqrt{\dfrac{k}{m}}t$
となります.
続いて,斜面上の物体の単振動です.
<解答>
(1) $x=x_{1}$はなにも力を加えないで静止していた位置なので,斜面に平行な方向のつり合いの式を立てます.このときの重力の斜面平行成分は$+x$方向に$mg\sin \theta$,弾性力は$-x$方向に$kx_{1}$なので,斜面に平行な方向のつり合いの式より
$mg\sin \theta =kx_{1}$ $\therefore$ $x_{1}=\dfrac{mg\sin \theta}{k}$
(2) 座標$y$における$x$軸方向の加速度を$a$とします.位置$x$における重力の斜面平行成分は$+x$方向に$mg\sin \theta$,弾性力は($x>0$のとき)$-x$方向に$kx$なので,斜面に平行な方向の運動方程式は
$ma=mg\sin \theta -kx=-k\left(x-\dfrac{mg\sin \theta}{k}\right)$
この運動方程式より,中心座標$x_{0}$,角振動数$\omega$,周期$T$は
$x_{0}=\dfrac{mg\sin \theta}{k}$,$\omega=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$,$T=2\pi \sqrt{\dfrac{m}{k}}$
(3) 中心は$\dfrac{mg\sin \theta}{k}$で,スタートが$\dfrac{2mg\sin \theta}{k}$です.スタート地点は静かにはなされたので,初速度0であり,振動における右端っこになります.右端と中心の距離が$\dfrac{mg\sin \theta}{k}$なので,振幅は$\dfrac{mg\sin \theta}{k}$です.また,最大の座標からスタートして,$x$軸の負の向きにいくので,$\cos$型です.したがって,時刻$t$における物体の座標$x$は
$x=x_{0}+A\cos \omega t=\dfrac{mg \sin \theta}{k}+\dfrac{mg\sin \theta}{k} \cos \sqrt{\dfrac{k}{m}}t$
水平方向の単振動であれ,鉛直方向の単振動であれ,斜面上の単振動であれ,すべきことは同じです.単振動の運動方程式を立て,振動の中心や角振動数,周期を読み取って,初期条件から振幅や$\sin$,$\cos$$\dots$を見極める.この一連の流れになれると単振動が得意になってくるでしょう.
次回はさらに他のパターンの単振動の演習をしましょう.
次回はこちら
コメント
[…] [基本]単振動の演習問題⑥ 運動方程式を立てる2 […]
[…] [基本]単振動の演習問題⑥ 運動方程式を立てる2 の続きです. […]
[…] [基本]単振動の演習問題⑥ 運動方程式を立てる2NEKO前回から単振動の運動… […]