引き続き導体棒とコンデンサーの問題です.
前回の内容はこちら
<解答>
時刻$t$における導体棒の速度を$v$,回路に流れる電流を$i$,コンデンサーに蓄えられている電荷を$Q$として,キルヒホッフの法則と導体棒の運動方程式を立てましょう.
導体棒の問題は次の3つの式を意識しましょう.
導体棒は磁場中を運動していると,電池になるんだったね.
次の式を確認しておこう!
今回は,速度$v$で磁束密度の大きさが$B$,長さ$l$の導体棒を考えているので,誘導起電力の大きさは$vBl$だね.
そして,コンデンサーの問題のときによく使うのは,次の2つの式だよ.
それでは,回路の式から立てましょう.
コンデンサーにかかる電圧を$V_{\rm C}$として,キルヒホッフの法則を立てます.
★ キルヒホッフの法則
$vBl-V_{\rm C}=0$ $\dots (\ast)$
★ コンデンサーの基本式
$Q=CV_{\rm C}$ $\dots (2\ast)$
$(\ast)$,$(2\ast)$より
$Q=CvBl$ $\dots (3\ast)$
さらに,導体棒の運動方程式を立てます.
導体棒は斜面方向に動いていますね.
斜面下向きに重力を分解した$mg\sin 30°$と,電磁力$iBl$が斜面上向きにかかります.
★ 導体棒の運動方程式
$ma=mg\sin 30^{\circ}-iBl$ $\dots (4\ast)$
一方,電流の定義式より
$i=\dfrac{\Delta Q}{\Delta t}$
これに,$(3\ast)$の$Q=CvBl$を代入して
$\eqalign{i&=\dfrac{\Delta}{\Delta t}(CvBl)\\&=CBl\dfrac{\Delta v}{\Delta t}\\&=CBla}$ $\dots (5\ast)$
上の式では,加速度の定義$a=\dfrac{\Delta v}{\Delta t}$を用いたよ.
さらに,$(5\ast)$を$(4\ast)$に代入してみよう.
$\eqalign{ma&=mg\sin 30°-CBla\cdot Bl\cr ma&=\dfrac{1}{2}mg-CB^{2}l^{2}a\cr (m+CB^{2}l^{2})a&=\dfrac{1}{2}mg\cr a&=\dfrac{mg}{2(m+CB^{2}l^{2})}}$
上式の右辺は一定なので,導体棒は加速度$a=\dfrac{mg}{2(m+CB^{2}l^{2})}$の等加速度運動をすることがわかったね.
★ 等加速度運動の式
等加速度運動の式より,時刻$t$における速度$v$は
$v=at=\dfrac{mg}{2(m+CB^{2}l^{2})}t$
時刻$t$における,移動距離$x$は
$x=\dfrac{1}{2}at^{2}=\dfrac{mg}{4(m+CB^{2}l^{2})}t^{2}$
また,$(3\ast)$の$Q=CvBl$に$v=\dfrac{mg}{2(m+CB^{2}l^{2})}t$を代入して
$Q=\dfrac{mgCBl}{2(m+CB^{2}l^{2})}t$
ちなみに,エネルギー収支の式として
$\dfrac{1}{2}mv^{2}-mgx\sin 30°+\dfrac{Q^{2}}{2C}=0$
が成り立っていますね.
この回路の場合普通の電池と違い少しずつ起電力が大きくなるので,誘導起電力がした仕事の分すべてがコンデンサーの静電エネルギーとして蓄えられます.
こちらの記事でも取り上げているので,興味がある人は読んでみてください.
また,次回の内容はこちらです.
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[…] [標準]導体棒とコンデンサー② | Physicmath(フィジクマス) より: 2020年11月18日 8:26 AM […]